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46 笑う理由
リシャンはヒビカが入っていたビルの屋上に立っていた。
このビル以上に高い建造物は付近にはない。吹き曝しの風が、無造作に束ねたリシャンの髪の房を揺らす。
微かに雪は降っていたが、ここでは積る事はない。
大きな給水タンクが軋めいて時折耳ざわりな音を立てていた。
「クロウ、付近にテロリストの糸はある?」
「今の所は見当たりません。‥‥最も、彼らの技術が我々よりも上だった場合、それも定かではありませんが」
「珍しく殊勝な言い方じゃない。いつもなら、統合政府管理局の技術に叶う者などいない!‥‥なんて息巻いてる癖に」
「そんな事、言ってましたか?」
「‥‥‥‥フフ」
とぼけるクロウを横眼にリシャンは笑った。
「確かにこのビルはたくさんのAIがいて、標的になる可能性もなくもないですが、ここよりも人だかりのある場所は他にもあります」
「‥‥今はそうかもね。とにかく、今は邪魔されたくないの、しっかり見張っててよ」
「‥‥全く。確かにムラシタヒビカが大成する可能性もあります。しかし、合理的に考えれば、今現在、彼女よりも成功している者がたくさんいて、その者に協力を仰いだ方が良かったのでは?」
「いいの、これは私の贔屓なんだから」
リシャンは粉雪舞う、コンクリの大地の上で、一人笑い続ける。




