43 次のステージへ
そんな生活を三週間。もちろん私は学校にも通ってないし、働いてもいない。だから起きてる時間のほとんどをトレーニング(?)に当てられてる。食事は一日二回。それも味気の無い固形食(栄養は足りているのだとか。仮想世界なので、栄養不足で倒れる事はないと思うけど)。お風呂に入ってる途中で寝落ちした事も一回や二回じゃない。ベッドに横になった途端に爆睡(仮想世界の住民の睡眠って、アバターのスリープ中って事?)。
「‥‥‥‥」
自分の変化に気がついた。
体が軽い! バレリーナの様に、体が柔軟。楽譜を見て正確な発生が出来る。
そして何より、多少の事では疲れない。疲れないので、練習にも集中できる。
「そろそろ次の段階ね」
発声していた私を見てたリシャンは、そんな事を呟いた。
「次の段階?
「忘れたの? 売り込みに行くのよ。芸能事務所に」
「え? もう?」
いくら何でも早い気がするけど。
「ヒビカの個人的な下地は十分。客観的に見ても、その辺のテレビに出てるコの数段上」
テレビというのは、この時代の解像度の低いモニターで、そこにテレビ局で作った番組を流して映す機械の事だ。
「容姿だけなら最初からアイドルぐらいにはなれた」
「アイドル‥‥」
それは憧れの存在。ステージに上がるとたくさんの人が声援を送ってくる。
「ヒビカのその容姿は、過去のあなたの姿を忠実に再現したもの。自信を持っていいわ。あなたは可愛い」
「‥‥‥‥」
そう言われて私は顔が赤くなる。昔、同年代の人に告白された事があって、そこで褒められた事がある。あの時はお世辞だと思ってたけど。
リシャンはそんな事は言わない人だ。
「じゃ、オーディションに行くから準備して」
「え、今から?」
頭がついていけない。




