41 走って、歌って、また走る
「ま、まずい!」
可能な限り、速く脚を動かしてはみたけど‥‥最後の方は歩道のガードレールに手をかけながら移動してる。
「はあはあ‥‥」
ボイストレーニング教室の前まで来た所で、私は息を切らしてドアに手をついてた。
時間はぴったり‥‥だけど、このままボイトレを受けるのは厳しい。
「‥‥何をしてるの? 入りなさいよ」
「は、はい」
肩を上下させながら中に入る。
「‥‥え?」
教室と看板があったけど、そこにいたのはリシャンだけ。
マイクと音響器材、その他の設備はちゃんとある。
「先生は?」
「私」
リシャンは私にマイクを渡してきた。
「???」
「何してるの、モニターに映ってる通り、声を出して」
「あ‥‥うん」
やっと呼吸の乱れがおさまってきたのに、また声を出さなきゃならない。
何でリシャンが先生の代わりをしてるのか、考える暇もない。
私はただ言われるままに、声を出し続けた。
「はい、今日はここまで」
「‥‥‥‥」
そう言われて、ガクっと首をうなだれる。
疲れた‥‥。もう喉がガラガラ‥‥これ以上は一言も出てこない。
「次はダンスレッスン」
「⁈⁈⁈」
「場所は二キロ先のダンス教室」
「!!」
この人は何を言い出すの?
まさかまた走らせるつもりじゃ‥‥。
「着替えたら、そこまで来て‥‥待ってるから」
「ちょっ‥‥」
声をかける前にリシャンは消えてしまった。




