39 挑戦の始まり
三日ぐらい‥‥私はひたすらに、この世界を探索した。
犬をつれて散歩してる人に話しかけてみたり(頭を撫でる‥‥かわいい)、カフェに入ってコーヒーを飲んでみたり(味がする。おいしい)凍った湖を眺めてみたり(綺麗、寒い)。
ここは人が人らしく生きていける世界‥‥リシャンはそう言ってたけど、今ではそれが良く分かる。
「ただいまー」
すっかり日が落ちてから家に戻ってくる。
返事は返ってこない。最初の設定で、AIの両親を置く事も出来たけど、私はしなかった。この世界に入る前、選択の欄に書くときは即答だった。なぜなのだろうって考えたけど‥‥多分、現実の両親と別れてきたから‥‥また同じ思いをさせたくはなかったんだと思う。
なんだかんだで、私も他人ごとみたいに考えるのが癖になっている。
そう言えば、そろそろ来る頃かな‥‥って考えてた頃、
“こんにちは”
インターフォンが鳴って、出てみると、その彼女‥‥リシャンの顔がモニターに映った。
“入っていい?”
「どうぞ」
鍵を開けると、革靴の音をたてて玄関に入ってきた。
彼女の服装は前に見た時とは違ってた。
白のブラウスの上に濃紺色のスーツ。同じ色のスカートも着物の時よりは短く、膝上のタイトなタイプだ。頭の両脇で球にしてまとめていた髪は下ろして、後ろで大きな房でまとめられていた。
多分、化粧はしていないのだろうけど、彼女の肌は透き通る様に白い。その対比で目じりと唇の赤色が目立つ。手に持っている幅が薄くて黒いカバンには、何が入っているのだろうか。
地味な格好をしてるけど、それでも目立つ。
私はただ見入っていた。
「そんなに驚いた?」
「普通に玄関から来るとは思わなくて」
「そう?」
リシャンは笑いながら意外に長い髪を手で流して勝手に部屋の奥に入っていった。
私も後に続く。
客間?‥‥だと思うけど(家の間取りはランダムだった)、そこのソファーに彼女は腰を下ろして、ローテーブルの上に何枚かの書類を広げた。
「‥‥‥‥」
その中の一枚を拾い上げてみる。
幾つかの歌唱教室と、運動ジム、ダンスレッスン教室、それから、色々な学習場所がのっている。
「私が計画した最短ルートでゴールを目指すから、睡眠以外の隙間時間はないと思いなさい」




