36 好きに生きて、好きに死になさい
私は‥‥ずっと寝たきりで‥‥誰かに頼らないと生きていけない。
なら、そんな私は何の為に生まれてきたのか、それとも意味なんて最初からなかったのか‥‥。
自由に動けるこの世界でなら、それを見つける事が出来るかもしれない。
「はい」
私がきっぱりと答えると、リシャンは肩をすくめる。
「随分と抽象的な目的ね。じゃあ、聞くけど、あなたは、それがどんな人にもあると思ってるの?」
「それは‥‥」
「目的なく、生きてる人は価値がないとか?」
「違うの! 私は‥‥」
「‥‥‥‥」
リシャンが目を細めると、大きかった瞳は鋭い凶器のような輝きに変わる。
「言い方が意地悪だったかもね」
彼女はフフ‥‥と笑う。
「生まれた目的‥‥言い換えれば、やりたい事。心の底から望む事をやって、それが叶った時、なんじゃないかな?」
「‥‥‥やりたい‥‥事‥‥‥私の‥‥」
それは‥‥。
「あなたが、自分で書いてるじゃない。たくさんの人に歌を聞いてもらいたいって」
「‥‥‥‥」
「それが、あなたの望み‥‥生きる目的なんじゃないの?」
「そうだけど‥‥‥そんな事‥」
確かにそれは私の夢。だけど‥‥。
「そう、違うんだ」
リシャンは後ろに手を組んで、真顔でため息をつく。
「だったら、あなたに用はないわね」
クルっと背を向ける。彼女の帯の深紅が目に滲む。
「好きなように生きて、好きなように死になさい」
窓から出て行こうとしている。




