35 私が私である理由
「戦争?」
それは聞いてなかった。
「なぜ、そんな時代を再現したの?」
「この時代は人は自由に人生を決めていく事、人間らしく生きていく事が出来るから‥‥というのが統合政府の公式見解」
「あなたはどう思ってるの?‥‥ええと‥‥」
「私はリシャン」
「リシャン‥‥素敵な響きね」
「そう?」
彼女はそう言って、フフ‥‥と小さく笑った。
「そうね、もちろん、今の所はそれぞれの国は大規模な戦争はしてないけど、政府は仮想世界には不干渉。だからリアル世界での正史のように戦争になっていく可能性はあるかもね。‥‥それも一つの結果」
「‥‥‥‥」
何となく他人ごとみたいな口調に聞こえる。政府の中の人なのに。
「そんな事よりも‥‥」
「‥‥‥‥」
私の側に近寄る。そしていつの間にか俯いていた私の顔を指先で上に向かせた。彼女の顔がすぐ近くにある。それは顔と顔が触れそうな程の近い距離。現実だったら吐息も感じるぐらい。
実際は私の方が年上だと思うけど‥‥彼女からは年上のような余裕を感じる。
「あなたのプロフィールのこの部分」
リシャンが見せてきたのは、仮想世界希望の時に提出した私のプロフィールの二枚目。そこには私がこの世界でやりたい事とか、希望なんかを書いた場所。
「これは本当?」
「‥‥‥‥」
見せてきたけど‥‥そこに何を書いたかはちゃんと覚えてる。
自分が生まれた意味を見つけたいって。
私にとってはそれ以上の目的がない。




