33 この世界は夢じゃない
「‥‥‥‥」
私は目を開けた。開けた‥‥つもり‥‥。
見えたのは天井。でもいつも見てる無機質な模様じゃなくて、木製の模様?‥‥みたいなものがオシャレな天井。
よくよく観察してみれば、私はベッドに寝ている。
ふかふかの羽毛毛布‥‥全然重くないのに暖かい。
枕から顔を浮かして部屋を見てみる‥‥はずだったのに、上半身を起こした。
「え?」
私は神経性の病気で体がほとんど動かせなかったはず。
ベッドから片足をおろして、それから立ち上がる。
「‥‥‥‥」
立てる‥‥それに自由に体が動かせる。
「凄い!」
私は今、仮想世界にいる。今の私はアバターの中。それがとても信じられないぐらいに自然。視覚だけじゃなくて、体に纏いつくひんやりした空気も感じる。足が踏んでる床の感触。自分の身体の重さ‥‥言ったらきりがない。
仮想世界への移住を希望してる人はたくさんいる。私も落ちたはずなんだけど、なぜか申請の許可の通知が来た。
「‥‥‥‥」
窓に手を伸ばして開けてみる。
「うわ‥‥」
途端に冷たい風が頬を撫でていく。
そして広がる景色‥‥この家は少し高台にあるのか、遥か遠くまで見渡せる。
広い庭から丘をおりていく真っ直ぐな道。道の両側には並木と、色んな形の屋根の家々。その木や屋根が白く染まっているのは‥‥多分、空から降ってきた雪という冷たいもの。灰色がかった雲の隙間から水色の空が覗いている。さらに向こうには‥‥何だろう? 大きな水場。貴重な水があんなにたくさんあるなんて、初めて見た。
「‥‥‥‥」
鏡があったので覗いた。




