27 絵画世界が開かれる
鎌を彼女の首にかける。
「‥‥でも、他のアバターを巻き込む事とそれは別。報いというのを受けなければならない」
《‥‥ああ‥‥》
「‥‥お休みなさい‥‥」
赤く輝く刃が、彼女の首を刎ねた。光の粒子が四散してすぐに消えていく。
“ああああ! そうか!“
「!」
突然、柳瀬が大声を上げた。
「そうか! わかったぞ! 僕は‥‥僕が求めていたものは!」
教室中に風が巻き起こる。強風にリシャンは体が激しく揺さぶられる。
「リシャン!」
「まさか、あなたも‥‥」
「あああ、僕は‥‥僕も‥‥」
壁が崩れ落ち、空へと舞い上がった。
巻き起こった竜巻が上空の雲と繋がっている。放課後の時刻。茜色の雲は黄土色へと変っていった。地上まで下りてきた雲が雲海を作る。傾いた日差しが、雲の凹凸に長い影を作った。
その風景はただの風景には見えない。
「‥‥そうか‥‥これは‥‥絵画の‥‥世界‥‥」
不自然なほどに大きく感じる太陽から、何かがこっちへと飛んで向かってきている。
翼の生えた女性‥‥今までの天使とは違い、人の表情をしている。柔らかな笑顔で‥‥柳瀬を目指している。
彼女は彼の姉だった存在なのだろうか?
「僕は‥‥僕はここだよ!」
彼もおぼつかない足取りで雲の上を歩いていく。
「こ、これはもはや、この一帯全域の環境を変えてしまっています。リシャン! 彼を消してください! こんな事が‥‥」
「‥‥‥‥」
「リシャン!」
「‥‥‥‥」
雲の隙間から別の天使が何人か現れる。それは既に消去されたはずのクラスの女子生徒達、そしてたった今、リシャンが消したはずの彼女だった。
「これで‥‥やっと‥‥」
彼女達が伸ばした手を柳瀬は掴んだ。そのまま別の世界へでも消えていきそうな勢いだ。
「行かせない!」
リシャンは雲の上を駆け抜け、瞬時に柳瀬のすぐ後ろについた。




