25 歪みの理由、純粋な渇望
「リシャン、どうしたのですか? 早く、そのアバターを消去‥‥」
「彼は違うわ」
「何がですか?」
「人物画を描いてる癖に、他人に対して全く興味がない‥‥だから、私の絵もあんなふうに描いてしまう」
感じていた違和感の正体を、その子細も説明せずにクロウに言い放つ。
「そんなアバター‥‥‥‥人格が、他人を攻撃する方向に意識が向かうはずがないじゃない」
「ですが、事件は起きました。彼が犯人でないとするなら誰が‥‥」
「‥‥ふふ‥‥それはすぐに分かるでしょ」
「なぜです?」
「犯人は‥‥‥‥この彼の姿勢に反対する存在だから」
リシャンは柳瀬の手を掴み、彼を起こした。
「僕は‥‥会いたいんだ‥‥」
「誰に?」
「‥‥‥‥」
彼は誰かを描こうとしていた。
それはもう、彼の近くにはいない誰か。
「クロウ! 彼の今までの生きてきた記録の中で、深く関わってきた女性をあげて」
「母親、姉、幼稚園と小学校、中学校、高校の同級生、あとは‥‥」
「その中で、今、会えていないものは?」
「二十七人です」
「彼の意思で会える者と、時間をかければ会う事が出来る者を除外」
「一人‥‥彼の姉です。姉は彼が小学校に上がる前に消失‥‥死亡しています」
「‥‥‥‥」
リシャンは彼を抱きしめた。
その幼い時期に死に別れた姉の記憶は、保持していても意味がないとしてサーバーから削除されたはず。だから、彼にもそれが誰かは分かっていないのかもしれない。だから推測が当たっているかどうかも分からない。
ただ一つだけ確かな事は、周りを歪めるほどに‥‥人格構成が崩壊するほどに会いたかったその人物は、絵を描く事でしか表現できなかったという事、それだけだ。




