24 その手は何を求めたか
「どうしたの?」
「‥‥‥‥」
リシャンの問いにも耳を貸さない。あれほど軽快だった鉛筆の音は、今はただ叩きつけるかのように激しいものに変わっていた。
「‥‥‥こんなんじゃ‥」
「‥‥‥‥」
立ち上がって彼の描いている絵を覗く。
そこには俯いて何かを憂いている少女の姿があった。姿はリシャンのようだが、何かが違っている。その違和感の正体は何なのか‥‥。
「違う! 違うんだ!」
座っていた椅子を後ろにけり倒し、頭を押さえてよろめく。顔は青ざめて視線は定まっていない。
窓がカタカタと揺れ始めた。
空間にも影響が出始めている。
「‥‥‥‥」
あらゆる方面から探っても、このアバター‥‥柳瀬幹夫にアクセスした痕跡は見られない。
それは即ち‥‥。
「リシャン!」
窓ガラスとカーテンをつき抜けてクロウが教室に飛び込んできた。硬いはずの窓には水面の様な波紋が広がる。
「最初からテロリストはいなかったのです! プログラムを歪ませている犯人はそれです! そのアバターこそが‥‥」
「‥‥そうね、ここにはリアル世界からの介入はなかったみたいね‥‥」
リシャンの体が金色に輝く。目がくらむその光が収まった後は、制服姿の女子生徒の姿はなく、赤色の着物を羽織り、大鎌を持った死神の姿になっていた。
「‥‥‥‥」
その鎌を柳瀬に向ける。
顔をあげてリシャンを見たが、さほど驚いたようでもなく、ただ茫然としている。
「‥‥‥僕は‥‥どうしたら‥」
震える手でリシャンの腕をつかんだ。強く握りしめたリシャンの白い腕に痕がつく。
「‥‥‥ふーん‥‥‥」
向けていた鎌の刃を下げた。




