185 避けられない接触
現在の世界の情報が流れ込んでくる。
AIの人口、外郭の状態、エネルギー使用量、開発中の技術‥‥列挙に暇がない。
「‥‥‥‥」
箱庭世界の外郭‥‥そこにある外部モニターから辺りを見渡す。すぐに茶色の地球と赤い太陽が見えた。まるでそれが自分自身の目のように自在にあちこちを見渡す事が出来る。必要なら小型ドローンを放ってクレーター陰などの死角になっている場所を見る事も出来た。
「‥‥‥‥?」
警報のようなものがどこからか聞こえたような気がしてきた。
「‥‥何?」
=偵察ブイに反応がありました=
質問には先ほどの彼女が答えた。
「どういう事?」
=箱庭世界シグマと箱庭世界ガンマが、こちらに接近中です=
「‥‥‥‥他の箱庭世界。話し合いにでも来たの?」
=兵装システムがオンになっています。射程に入り次第、攻撃してくると思われます=
「戦うしかないって事?」
=戦闘になった場合、我々が勝つ確率は2%もありません。両世界とも、我々の世界より軍事技術が発展しています。彼らは、仮想世界の規模を最小限にして、人間の情報をアーカイブだけにする事で、ほとんどのリソースを兵器開発に費やしたと思われます。こちらは技術で五十年の遅れがあります=
頭の中に二つの球状の物体の姿が浮かび上がる。
「それなら逃げるしかないんじゃない?」
リシャンは箱庭世界の円柱下部のエンジンの状況を確認した。
エネルギーは十分に確保されている。
「すぐに点火して! あとは全速力で反対方向に逃げる!」
=了解しました=
すぐに小さな地震のような振動が起こる。
「今から飛び立てば接触は避けられるとは思うけど‥‥」
「‥‥‥‥」
クロウの顔を見つめる。もし遅れた場合は全てが消えてしまう。判断ミスは絶対に出来ない‥‥その責任の重圧は心を鷲づかみにでもされているかのようだ。
「大丈夫ですか?」
「もちろん!」
リシャンは笑って、宙に大きなパネルを出した。
そこにはこの箱庭世界の現在地と、他の二つの箱庭世界が表示されている。赤い矢印はこっちに真っ直ぐに向かってきているのが、すぐに分かるようになっていた。
「私は‥‥」
エージェントと言おうとしたが、それは違うと途中で言葉を飲み込む。
「私が今まで、根を上げた事があった?」
「記憶している限りありません」
「あは!‥‥そういう事!」
リシャンは正面のパネルを睨みつけ、そして高らかに笑った。




