180 統合政府
=はじめまして‥‥=
丁寧にそう言って頭をさげた。
足首の見えない程の長いドレスを着た、長い髪の大人の女性だった。
頭には王冠のようなものを付けており、手首には白い手袋‥‥おとぎ話の中の女王のように見える。
=私達は統合政府の知能集合体。本来の私はアバターを持たないのですが、あなた方にはこのような姿で接した方が分かりやすいと思いましたが、如何でしょう?=
「‥‥‥‥」
統合政府の知能集合体‥‥と名乗った彼女の表情は穏やかで、敵意があるようには見えない。だが、表情はどのようにも作る事が出来る、見たままをうのみにする事は出来ない。
現に、侵入者の排除をする目的でつい今しがたも攻撃してきたばかりだ。
=私達はあなた達をずっと見続けてきました。そしていつしかここまで来るだろう事は、計算上確実でしたが、こうまで早く到達するとは予想の上をいっています=
彼女は指を鳴らす。
「‥‥‥‥」
つい今まで回廊の中だったはずが、真っ青な空の何処かの神殿跡へと場所が変わっていた。
「リシャン、彼女には質量がありません。それに、アバターにあるはずのデータも存在しません」
クロウが少し屈んでリシャンの耳の高さに頭を合わせてそう呟いた。
「‥‥見えてるけど、そこにはいない」
「我々の視覚情報の中に割り込んできているようです」
「‥‥‥つまり幻って事ね‥」
リシャンは唇を噛んだ。
相手はこちらの手の内を全て読んでいるという事になる。その気になれば一瞬にして消去されてしまうかもしれない。
「‥‥見続けていたって言うけど‥‥」
それならばテロリストであり、侵入者である自分達をなぜすぐに処分しないのか‥‥会話から糸口を見つけるしかない。
「何の目的で? テロリストの撲滅は統合政府、管理局の目的なんじゃないの?」
=世界の破壊を目的としたテロ行為であれば、それは許されるはずのない行為です。リシャン‥‥あなたはこの世界の破壊が目的ですか?=
「違う」
=‥‥‥‥=
彼女は微笑んだ。その捉えどころのなさは、何処かシャオティンにも似ているような気がした。
=既に知っていると思いますが、この世界は円柱状の箱庭の中にしかありません。既に人類は滅びました=
「‥‥‥‥」
そうかもしれないとは薄々思ってはいたが、断言された事でその事実の重さにリシャンは息を飲む。




