179 近づく存在
「‥‥リアル世界は、半径三十キロ、高さ二百キロの円柱状の建造物に全て集約されているようです。内部はほとんどがコンピューターで占められており、その箇所以外のスペースはほとんど残っていません」
「‥‥中に街があるとは思えないわね」
リアルに街がないとすれば、人はどういう状態なのだろうか?
「これ以上は分かりません。少し危険ですが、上の階層を調べてみます」
クロウが幾つかキーを叩いていたが、
「しまった!」
室内にけたたましく警戒音が響き、天井の赤いランプが点滅した。
出入り口にシャッターが下りる。
「見つかりました! すぐにここから脱出します!」
「‥‥つ‥‥」
リシャンは細い金属のはしごの様なシャッターを鎌で切りつけたが、どんな鋼でも切り裂くはずの鎌でも、傷一つつかない。反動で体が大きく後ろに吹き飛ぶ。
「他に出口は‥‥」
見渡したが、それらしきものは見当たらない。
“ここは統合政府の統括室です”
「!」
部屋の中の何処からか声が響く。
“関係者以外の立ち入りは禁止されています。無断で立ち入った場合、統合政府法、第二条によって罰せられます”
天井から三体の黒い機械が下りてきた。逆関節の二脚で、短い両腕にはガトリング砲のようなものをつけている。
「リシャン!」
「‥‥‥‥」
クロウが叫ぶのと、その黒い機械が発砲するのは同時だった。
リシャンとクロウは、コンピューターの棚の陰に隠れる。ここに撃ってくるとは考えにくかったが、彼らは見境なしに腕の砲身を回転させる。金属の棚はたちまちのうちに穴だらけになってショートした。
「く!」
爆発したので、すぐに別の棚に隠れる。
“‥‥関係者以外の立ち入りは禁止されています‥‥”
声は同じ内容を繰り返している。
「‥‥問答無用って事?」
「出口は彼らの向こう側です」
「だったら向かっていくしかないんじゃない?」
リシャンは手にアサルトライフルを出現させ、スコープを覗いて機械の一体に狙いを定める。
「こういう場合はこれが一番!」
引き金を引くと、ダダダダ‥‥と、同時に何発もの銃弾が発射される。予期せぬ反撃を喰らい、一体は火を吹いて倒れた。
「まだまだ!」
手榴弾のピンを口で抜いて機械の方に放り投げた。
爆風が巻き起こり、リシャンとクロウは棚の陰に隠れる。
騒ぎが静まったあと、そこには機械の部品らしきものが煙とともに散乱していた。
「全く、あなたという人は」
「とにかく、外に出ましょう」
リシャン達は廊下に出た。
「‥‥‥‥」
何処までも果てしない無限の廊下の向こうから、誰かが歩いてくる。堅い床に足がつく度に硬質な音がこの細長い空間に響いた。
「‥‥‥‥」
その人物はリシャン達のすぐ正面まで来て歩みを止めた。




