18 静寂の終わり
何も起こらない学校での時間は退屈以外の何者でもない。
そんな時間をやっとの事で乗り越えて放課後を迎える。
終了を告げるサイレンが鳴り、部活のある生徒以外は一斉に下校を始める。
リシャンもその流れの一つになる、
その中では生徒達の笑い声、騒がしい会話が渦の様に周りに満ちる。
ここはリアル世界ではとうに過ぎ去った過去。そんな世界の中でこうしている事は、リアル世界の化学技術の結晶だという事を、彼女は知識では理解はしている。だが、リシャン自身はリアルで活動する事が出来ない。
本来の自分の身体がどうなっているのか‥‥未熟児として捻じれたままなのか、普通に成長しているのか。
クロウに聞いた所で、答えてはくれない。
「リシャン、歪みが発生しています」
「‥‥‥‥」
足を止める。
ここは街路樹の並ぶ住宅街へと続く道。あれだけいたはずの他の生徒は誰もいなくなっている。
「‥‥‥‥いた」
一人だけ生徒を確認できる。
反対側の道を歩いているのは、同じクラスの女子生徒。声をかければ届くぐらいの距離にいるはずだが、リシャンには気が付かずにスマートホンという当時流行った携帯デバイスを見ながら歩いている。
「!」
地響きとともに、アスファルトの地面が割れていく。そこから土埃とともにせり上がってきたのは‥‥女性‥‥背中に翼の生えた白い衣装で身を包んだ天使だった。
天使は真っ直ぐに女性徒の方に向かっていく。
「クロウ!」
「周辺への環境データ、及び、AIへのアクセスは見当たりません」
「だったら、あれは何?」
「不明です」
「役に立たないわね!」
リシャンは中央分離帯を乗り越えて、謎のアバターと女性徒の方へと走った。




