173 託された想い
「‥‥‥‥」
リシャンは倒れている自分と同じ顔の少女を見て、顔を曇らせた。
=あああああ‥‥=
遠くで見守っていたクロウが飛んできた。
=リシャン! 大丈夫です! まだあなたは!=
「‥‥‥‥これで大丈夫だとしたら‥‥私は‥‥人間じゃないって‥‥事に‥‥なるんじゃない?」
=‥‥‥‥‥‥=
クロウは言葉を失った。
「そこの‥‥偽物‥‥」
「‥‥‥何?」
「私が‥‥負けたのは‥‥技術的な問題であって‥‥それは‥‥私が生きてきた‥‥想いが弱かったわけ‥‥じゃないから‥‥ね‥‥そこの‥‥所は‥‥」
「‥‥もちろん」
「だから‥‥あなたに‥‥私の‥‥想いを託すから‥‥覚悟しなさい‥‥げほっ」
=リシャン! これ以上は体の負担に=
クロウの言葉を鎌で制止する。
「余計な事を言って辱めるな」
=‥‥‥‥=
「‥‥お願‥‥い‥‥」
「‥‥‥‥」
リシャンは大きく頷く。それが見えているのかいないのか‥‥笑みを浮かべ、それきり力が抜けて頭が横になった。
金の光の球に変化し、そしてその球は無数の光に変わってリシャンの中へと入っていく。
「‥‥‥‥」
気が付けば彼女だったものの存在はそこから消えていた。
「‥‥あなたの想い、確かに受け取った」
リシャンは胸に手を当てる。
=あああ‥‥ああ‥‥=
クロウは消え去った場所に立ち、ただ嘆いている。
=なぜです! なぜなんです! どうしてあなたという人はこうなんですか! どうして自分から危険な事に首をつっこむんですか! 今だって本部との連携を切ってなければ消えていたのはあなたの方でしたよ!=
「‥‥‥‥」
=私はあなたの‥‥リシャンの担当になってからもう何人ものあなたをこうして見送ってきました。積み重なっていく絶望があなたには分かりますか! 今度こそリシャンには幸せになってほしかった‥‥ヴァイアスなどという危険なテロリスト集団がいなくなれば、あとは安全に‥‥たまに休日を楽しむ普通の女の子として生きてほしかった!‥‥それなのに!‥‥ああああ!=
「‥‥‥‥」
前に休日で街を散策した事を思い出す。クロウがやけに勧めてきたのはそういうわけがあったようだ。
そういえば猫の飼い主のあの少女は元気にしてるだろうか。
「‥‥あなたに許して欲しいとは思わない。私も彼女も自分の矜持をかけて戦った。それを否定するのは彼女を侮辱すると同じ事」
=‥‥‥‥=
「‥‥‥でも‥‥ありがとう‥‥‥」
リシャンはクロウに背中を向けた。
次にやる事は、この世界からの出口を見つける事だ。
そしてその先にある管理局のサーバーに侵入する。途中でどれほどの妨害があるのだろうかは分からないが、行った先で判断するしかない。
やるべき事はまだ山積みだ。




