171 経験という力
「ぐはっ!」
鎧のおかげで切り裂かれる事はなかったが、衝撃がリシャンを襲い、体勢を崩した戦乙女は、遥か下方の路上へと叩きつけられた。
落下の衝撃が四方に広がり、近くの建物の幾つかは崩れ落ちる。
=リシャン!=
大きく抉れた地面の中央に、赤鎧のリシャンが横たわっていた。
「‥‥こんな‥‥事で‥‥」
力を込めて体を起こす。
自分の中を通り過ぎていった人々の顔が流れていく。
そんな人々の想いを受けとっている。
偽物に負けるはずがないのだ。
「‥‥私は‥‥負ける‥‥ものか‥‥」
見上げれば黒衣のリシャンは翼を羽ばたかせて、静かに降りてくる。対照的にトン‥‥という小さな音だけで大地に降り立つ。
=‥‥なぜ‥‥全てのスペックが‥‥勝っているのに‥‥=
「そうね、上回ってるのは経験ぐらいかもね。でもね、それが分からないから管理局‥‥統合政府は間違った判断をしてしまう‥‥それが分からないんでしょうね。シャオティンにも同じ事を言われなかった?」
=‥‥‥‥=
黒衣のリシャンが近づくと、赤のリシャンは何とか立ち上がった。額からは血を流している。よくよく見れば肩も負傷しているが、恐らくはシャオティンがつけたものだろう。
「まだ‥‥勝負はついていない!」
剣の切っ先を向けてきた。
「勝負はこれからっ!」
「全く、同感、さすが私!」
「はああああ!」
「‥‥‥‥」
同じ声の二人は同時に得物を切り結んだ。
その衝撃は、廃墟に残ったビルの壁を吹き飛ばしていった。




