170 火花が答え
黒衣のリシャンは、戦乙女のリシャンの正面に立った。
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
二人は何も話さない。ただ互いの顔を見つめている。
=リシャン‥‥=
クロウのその言葉はどちらに向けられたものなのか‥‥区別がつかないはずだが、二人にはすぐに分かった。奇しくも‥‥ではない。お互い以上に互いの事を知っている者はいない。
クロウのその言葉は黒衣のリシャンに向けられたものだった。
=あくまで、管理局の敵となって立ちはだかるつもりなのですか?=
「私の行く手を遮るなら、そうなるでしょうね。目的の為の手段として、仕方なく敵対するしかない。それはそこの私も一緒だと思うけど?」
「全く同感ね」
「ふふ」
「はは」
二人は同時に武器を相手に向け、切っ先を合わせた。
青の光の剣と赤の炎の鎌が火花を上げて、互いの顔を照らし上げた。
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
どちらかが合図したわけではない。二人は翼を使ってきりもみしながら上空へと舞い上がっていった。その軌跡は青と赤の粒子が後方に捻じれながら引く事になり、それは一つの彗星のようにも見えた。
=‥‥リシャン=
地上に残されたクロウは、呟いてその行く先を見つめた。
二人は刹那の時間で上昇の限界に達した。そこはオゾン層が破壊された後、人類を守っていた電磁シールドが張られていた区域だが、仮想空間ではそこはフェイクであり、ただの空の色をした壁にぶち当たる。
「!」
「‥‥‥‥」
天井に沿って互いに逆方向に飛び退き、そこで同時に翼からガラスの羽と、黒の羽を飛ばした。ほとんどが相殺されたが、残った羽が周囲の壁に突き刺さり、ヒビを入れていく。
「‥‥はああっ!」
漆黒リシャンは鎌を回転させた。炎のリングが手を離れて戦乙女に向かっていく。
「ふん」
光の剣で二つに斬ると、リングは胡散霧消した。が、すぐに第二、第三のリングが向かってきた。
「‥‥面倒!」
リシャンが盾を構える、黄金の光が全面に伸びてリングを飲み込んでいった。
「‥‥‥‥!」
盾を構えていたリシャンは、その光の先に違和感を感じて目を凝らす。
「まさか!」
黒衣のリシャンはその光を鎌で二つに裂きながら直進してきていた。
気づいた時には鎌の間合いに入っていた。
「‥‥く」
剣で受けようとしたが、リーチは向こうの方が上だった。反射的に盾を向けた。
「普通はそうするよね!」
上から振りかぶるモーションを見せていたが、それはフェイクで、すぐに真横からの振りに変化させた。既に剣の間合いではあったが、戦乙女のリシャンはその可能性を考えてはおらず、燃える鎌の切っ先は赤い鎧に直撃した。




