162 私を名乗る敵
=リシャン‥‥あなたは生きていけますよ。この世界で誰よりも自由に=
「どうして、そう思うの?」
=あなたが倒れる姿を、私は見たくはないからです=
「あは‥‥つまりクロウが保証してくれるって事?」
=そう思ってもらっても構いませんよ=
「‥‥‥‥」
からかったつもりが、そのまま返してきたのでリシャンは口ごもる。
「‥‥ねえ」
=何でしょうか?=
「クロウは‥‥私と管理局との橋渡し役だけど‥‥それだけ?」
=‥‥‥‥=
「‥‥‥‥」
しばしの沈黙が流れた後、クロウが先に口を開く。
=私は‥‥あなたを死なせたくはありません。その光景は‥‥悲しすぎます=
「‥‥‥‥」
答えになっているような、無いような‥‥リシャンはため息をついた。
=‥‥所で、今回はあなたの偽物も混じっているようです=
「へえ、テロリスト界隈では私も有名になったものね」
=まあ、所詮は偽物です。今のリシャンの相手にはならないでしょう=
「‥‥そうかもね」
細かな振動が伝わってくる。地面が揺れているというよりは、空間そのものが揺れている。どこかで鉄板が引き裂かれる甲高い音が響いた。
=奴らがきます。注意してください=
「‥‥‥‥」
リシャンは正面の壁を睨む。黒い渦が現れ、そこから黒い風が吹き出す。
風がやんだ後、霧となって残り、それは二人の人影に変わっていった。
「‥‥‥‥あれが」
リシャンはビルの上から飛び降りた。その途中で鎌を出現させる。
人影はこちらをじっと見ていた。
一人は黒髪、長髪の女性、シャオティン。もう一人は赤い着物の少女。おまけに、大きな鳥のようなものもいた。
=あなたの推測が正しかったようですね。テロリストの本隊はこちらで正解でした=
足元のクロウが呟く。
「全く、性懲りもなく世界を歪ませようとするなんて‥‥」
鎌の柄の先を掴み、大きく振り回す。何段かに縮められていた柄が伸びる。
「来い! シャオティンと私の偽物! この世界の全てのAIの為‥‥テロリストは排除する!」
鎌を振る。崩れかけた鉄の地面の上を、衝撃波が走っていく。赤い着物のリシャンは同じ仕草で鎌を振り上げ、その波をぶつけて消した。
「いきなりご挨拶ね」
赤いリシャンはそう言って笑った。




