161 終末都市のリシャンとリシャン
そこは廃墟の街だった。三百階を超すビルが立ち並び、その上空には電磁フィールドが、オゾン層が破壊された後の世界を守っていたはずだ。仮想世界013の設定年から二百年後の街がそこにある。
だがそれはもう廃れた技術のはずだ。環境破壊は紫外線だけの問題ではなく、急激な温度上昇、海水の蒸発にともなう海面の低下、そこからくる潮汐力の低下‥‥地軸の乱れまで起きるのは、これから百年もかからなかった。
リシャンは歴史でその事を知ってはいた。が、目にするのは初めてだった。
ここに人はいない。動物も植物も‥‥ただ崩れつつある世界だ。
異常なまでに乾燥した大地は、致死性の毒の混じった風が吹き荒れ、リシャンの髪をはためかせた。
「‥‥‥‥」
斜め後ろにシャオティンが立っている。ひび割れた地面は、前に見た破棄された013とは違い、そこから植物が這い出ている事はない。
=精巧に出来てはいるが、これは仮想世界だ=
「‥‥あんたも来たの?」
レイブンが周囲を見渡している。
=見届けなければならないからな‥‥それより‥‥=
“読み通りね”
「!」
どこからか声が響き、二人は武器を手に身構える。風が舞って位置は特定できない。
その声には聞き覚えがあった。
「‥‥お前は‥‥」
リシャンは鎌を持つ手に力を籠める。
崩れかけた建物の奥の窓から誰かが大地に降りてきた。
その人物は高校生の制服を着ていた。そして手には大きな死神の鎌を持っている。
「‥‥リシャン‥‥」
そう呟くと、制服の少女は笑みを浮かべた。
=あなたの推測が正しかったようですね。テロリストの本隊はこちらで正解でした=
この世界では存在しないはずの、カラスが彼女の足元にとまった。
「全く、性懲りもなく世界を歪ませようとするなんて‥‥」
制服のリシャンは鎌を振って柄を伸ばす。
「来い! シャオティンと私の偽物! この世界の全てのAIの為‥‥テロリストは排除する!」
「‥‥‥‥」
三人は同時に武器を構えた。




