159 反逆の理由
「そう?‥‥そうは見えないんだけど?」
「私にだってある!」
チェンランは肩をいからせてリシャンの所まで来た。
「私は‥‥私はね!‥‥政府に無理矢理、愛する人と引き離されたの!」
「‥‥‥‥ん?」
大人のような発言に一瞬戸惑ったが、彼女達は見かけはただのアバターであり、年齢、性別、外見、その他は何も分からない。
「‥‥せっかく、ケンジとうまくいってたのに‥‥婚姻届けを出したら、政府から変更通知が来て‥‥それで‥‥ケンジは他の女と無理矢理‥‥絶対、無理矢理に決まってる‥‥あんな笑顔で泥棒女と結婚するなんて‥‥絶対、ぶっ壊してやる‥‥ふ‥‥ふふ‥‥」
「‥‥‥‥まあ、色々あるみたいね」
リシャンは深入りしないよう、チェンランの側から静かに距離を置いた。
シャオティンは目を閉じた。
「多かれ少なかれ、ここにいる者達は統合政府に反感を持っている。それは私やリシャン‥‥あなたの理由とは別かもしれないけど、それは本物」
「‥‥‥ふん」
リシャンは唇を噛んだ。
「あなたは私を破棄された世界に送る為に世界を歪ませた。そのせいで大勢のAIが消えた。理由はどうあれ、例えそれが必要だったしても、私はあなたを許しはしない」
「‥‥‥‥」
「でも、今は同じ目的の為に協力してあげる。馴れ合いはしない」
「分かってる」
“シャオティン‥‥”
ランユーの声で、会話はそこで途切れた。
「‥‥‥‥ルートは確保しつつある。ここから先に進むと、奴らに気づかれる」
「隠密行動はここまでですね」
シャオティンが頷くと、その場の全員は首を縦に振った。
「開始すると、管理局のアンチウイルスが雪崩れ込んできます。ですが、避けては通れません」
シャオティンは帯に差した笛を手に持った。
「何としても終了までの時間を稼ぎます」
「‥‥‥‥」
リシャンも頷いた。それが合図でもあったかのようにランユーは操作を再開する。
天井の側面が赤い光に変わる。そこからマネキンの様な、顔のない人形が、通風孔から砂のように次々と落ちてきた。
「‥‥ふふ‥‥皆、滅びるなん‥‥」
その中心部に向かって、チェンランは二本の小太刀を構えて躊躇なく突撃していく。
シャオティンは笛を吹いた。甘い旋律が辺りに満ちると、マネキンの頭や腕に糸が刺さり、そのマネキンは周りのマネキンに、持っている短剣で攻撃を始める。他のヴァイアスのメンバーもそれぞれの武器で応戦を始めた。
倉庫内はたちまち騒然となる。




