156 消してきた者の数だけ
シャオティンがなぜそんな事を言い出したのか分からず、黙って次の言葉を待った。
「心の中で整理がついた時、私がやるべき事が何か‥‥考えた。最初はただ、真実を隠していた管理局と統合政府への憎しみから、それを潰そうとした。でも、それでは何も解決しない事が分かってきた」
「‥‥‥‥」
「塔で全てが分かったわけじゃなかった。私は情報を求めてこの仮想世界を巡った。そうして、統合政府の目的を知り、その結末に不満を持つ人を集めて、この組織をつくった‥‥私達はもう何度も管理局と戦っている。その中にはリシャン‥‥あなたもいた」
「‥‥‥‥」
「幾人ものあなたが‥‥たくさんのAIと接して、いろんな思いを受け入れて、受け取っていた‥‥そんなあなたを私は消してきた」
「今さら罪悪感に目覚めたとか?」
「‥‥そうかもしれないわね」
シャオティンは顔を曇らせ、そして言葉を続ける。
「私も、たくさんの人を管理局の任務の名のもとに葬ってきた。AIの人達‥‥彼らはその命を使って果たそうとした事を、途中で摘み取ってきた。だから‥‥」
「‥‥‥‥」
「管理局、統合政府を倒す‥‥それが、私が命を使ってやりたい事」
「‥‥‥‥そう」
リシャンは言葉短く、そう答えただけだった。
彼女もまた自分と同じAI‥‥。それを分かった上でそう言うのであれば、もはや覚悟は決まっているようだ。
「じゃあ、ぶっ潰しますか。そんなふざけた組織」
「‥‥ありがとう、リシャン」
二人は初めて笑った。
「もうすぐここにヴァイアスのメンバーが集まってくる。段取りはそこで説明する」
「‥‥‥‥了解」
その為にここに呼んだらしいが、シャオティンが絶望のまま一年を過ごしたこの場所を見せたかったこともあるのかもしれない。
日が落ちて来た海は、波間に弾く光が網の様に、洞窟の壁をゆらゆらと照らしている。あと数分で辺りは闇に落ちる。その前の僅かな時間‥‥その輝きは心を穿つ程だ。
「‥‥成功させてみせる」
リシャンのその呟きが、この狭い空間に光を与えた。




