153 幸福は最適化できない
シャオティンはリシャンに顔を向けた。そして真顔に戻る。
「‥‥この世界は統合政府の支配下にある。そのAIは人間の幸福を最優先にする事を目的とはしている。出した結論は全ての人の自由意志を奪って、世界全体での効率的な幸福の追求‥‥」
「‥‥‥‥」
リシャンは首を横に振った。
以前、任務として出会った夫婦の事を思いだす。
夫婦はすれ違って不幸になっていた。それは些細な理由からだったが、求めている者は同じだった。
「人は皆が幸せを求めてるけど、必ずしもそうはならない。なぜなら、求めている幸せの数に比べて、不幸の種類は数限りなくあるから。‥‥その失敗を最初から避けて効率的に幸せを目指そうなんて‥‥」
結果として夫婦はあれで幸せになったのだろう。画一的に管理していればあんな事はなかったはずだが、全ての人が求める幸せというものが、政府の計画するもの、たった一つになってしまう。そこに幸せはあるのだろうか。
「‥‥‥‥まさか」
リシャンは初めて笑った。
人は間違える。目標も手段も‥‥そんな人間が集まれば失敗もするし、不幸にもなる。が、あの夫婦のように新たな幸せは生まれてはこない。
「統合政府‥‥管理局‥‥馬鹿じゃないの?‥‥馬っ鹿じゃないの⁈」
もう一つ疑問があった。
「‥‥そう言えば、あの破棄された013って時間を加速させて、武器の開発を急がせてたけど、それはなぜ?」
「詳しくは我々も分かりません。一つの可能性として、統合政府は一つではないのかのしれません」
「まさか他の政府と戦う為に?」
「‥‥‥‥」
シャオティンは首を横に振る。
「リシャン‥‥手を貸してください。私は旧タイプのAIで、途中までしか本拠のサーバーに侵入できません。あなたならもしかしたら出来るかもしれません」
「‥‥破壊したら‥‥この仮想世界はどうなるの?」
「これまで通り、自由に歴史を刻んでいけるように運営していくつもりです」
「‥‥そう」
鎌の柄で肩を叩く。
「仕方ないなあ。テロリストと手を組むのは本意じゃないんだけど」
「‥‥‥‥」
リシャンとシャオティンは向き合った。
「‥‥よろしく、リーダー」
「こちらこそ」
強く握手をした二人のその姿を見て、ランユーとチェンランは肩をおろし、レイブンは首を大きく振った。




