151 リシャンという存在
「私はテロリストを放置はしない」
=まあ、待て、待て!=
間にレイブンが割って入った。
=ここで争っても意味がないんじゃないか? リシャンも今は、彼らの言葉を聞いてそれで判断してからでも遅くはないだろう=
「‥‥‥‥やけにシャオティンの肩を持つのね」
=パートナーだからな=
「‥‥‥‥」
クロウの事が頭を過る。一度もそう言ってきた事はない。今頃はこの世界のリシャンと行動を共にしてテロリストと戦っているのだろう。
「‥‥‥‥そうね」
鎌を下ろしたのは、レイブンの言う通り、話を聞いて情報を得てからの方が得策と考えたからであって、彼女達に迎合したわけではない。それに加えて、シャオティンを含めた三人を同時に相手にするのは分が悪すぎた。テロリストを前に激高しているように見えたが、リシャンの頭は冷静に状況を分析していた。
「‥‥それなら私の質問には答えてもらうわよ」
「‥‥‥‥」
シャオティンは静かに頷いた。
「あなた達の目的は何?」
「‥‥この世界の進捗を遅らせる事」
「仮想世界を壊す為に?」
「違う。私達はただ遅らせたいだけ。統合政府が判断するのを遅らせる為に」
「‥‥‥‥統合政府」
「あなたは、捨てられた013から通ってきたなら、ある程度は知っているんじゃないの?‥‥統合政府は巨大コンピューターだって事が」
「‥‥‥‥」
自由意志を持った人間の社会と、完全に統制された人間の社会。仮想世界はその実験場‥‥塔の中の端末で垣間見た情報はそれぐらいだった。
シャオティンは続ける。
「統合政府は最初から統制による人類の一律管理の方針を決めてた。この仮想世界はその立証試験場。終了次第、この世界は消去されてリアル世界は統合政府‥‥超巨大AIによる管理体制に移行していく」
「だから邪魔してたってわけ?‥‥そんな事をしてたって‥‥」
「そう‥‥いつかは終了してしまう。だからその前に対策する必要がある」
「‥‥‥‥」
リシャンは目を細めてリシャン達を睨む。レイブンも珍しく話に加わる事をせずに経緯を見守っている。
「例えば何をたくらんでるの?」
恐らくその問いは、シャオティン達、ヴァイアスの根幹に関わるものであり、それを話すとは思えなかった。
「政府本拠にあるサーバーに侵入して、プログラムを破壊する‥‥」
「はっ⁈」
リシャンはわざとらしいほどの声で嘲りの声をあげた。
「そんな事が出来るわけないでしょ? そこはどれだけ厳重なプロテクトとアンチウイルスがかけられてると思ってるの? 正気じゃない」
「‥‥そうね、正気じゃない」
シャオティンは珍しく真顔になる。
「私達は何度も試してみた。結果は何人もの同士を無くしただけだった」
「‥‥ふん‥‥そりゃそうでしょ」
「だから‥‥あなたにも手伝ってほしいの」
「‥‥私がテロリストの手伝いをすると思う?」
「あなたはせざるを得ないわ」
「そう?‥‥ここであなた達を斬って、その手土産に管理局に戻る方が良いように思われるんだけど?」
リシャンがそう言うと、二人は再び武器を向けた。
「‥‥リシャン‥‥‥あなたが戻る所はないのよ」
「‥‥‥‥」
「あなたは‥‥私も‥‥最初から管理局に騙されていたの」
「‥‥‥‥」
「私達は人間じゃない。最初からAI‥‥リアルに戻る体なんてない」
「そんな事‥‥」
「私は何人ものあなたを倒して‥‥消してきた‥‥その度にあなたは作られてきた。今のあなたも、そのうちの一人‥‥今、管理局にいるのも同じリシャン」
「‥‥‥‥」
リシャンの鎌の光が消えた。




