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146 最上階のもう一人の死神

挿絵(By みてみん)

=頂上からこの世界から脱出できるが、その前に付近を調べてみた方がいい。バックドアからは世界の様子が俯瞰で見えるはずだ。管理局や統合政府の目論見なども分かるかのしれない=

「いいわね、それ!」

 俄然、やる気になったリシャンは、植物を払う動作に力が入る。

=しかし‥‥真実を知る事が良い事とは限らない。もしそれが‥‥お前の考えているようなものでなかった場合‥‥その情報はお前を不幸にするかもしれないが=

「別にいいんじゃない」

 床を這いまわっていた蛇のような何かを、鎌の柄の先で踏み潰す。

「私が嫌いなものの一つにね、優しい嘘ってのがあるのよ。傷つけないように嘘をついた?‥‥馬鹿じゃないの?‥‥そんなものはただ誤魔化されていただけ。私は本当の事を知りたい! 真実を知って落ち込むような事はない!」

=‥‥ふむ‥‥お前はどうしてそこまで達観出来た? いくらエージェントの訓練を受けたとしても、そこまでになるには難しい=

「それはね!」

 蔦‥‥のように見えるが、太いケーブルがひとまとまりになっているものだった。それがなぜか、頭を持ち上げてリシャンに襲い掛かってきた。

「私はたくさんのAIと‥‥仮想世界の人達と接してきた。彼らは‥‥」

“OOOO!”

「彼らは一生懸命に生きていた! それを他人がとやかく言う権利はない! だから!」

鎌を一閃させる。振ったのは一回だったが、ケーブルの化け物は、切り口から細切れになって消えていった。

「私はそんな彼らの思いを、記憶として持っている。これは絶対になくしてはならない!」

=‥‥‥‥=

「だから私は真実を知ってここから出る! こんなとこで燻ってるわけにはいかないのよ!」

=‥‥そうか=

 レイブンは言葉短くそう答えると、それ以上は何も言わなかった。

 特段に抵抗らしいものもなく、最後の階に続く階段を登っていく。

「‥‥‥」

 リシャンの足が止まった。

 階段を登り切ったその先、そこに誰かが立っている。背後からの逆光ではっきりと姿は見えないが、それほど大柄な人物ではない。

=あれは‥‥=

「悪趣味ね‥‥」

 リシャンは鎌を回してフロアの床に柄の先端を叩きつけた。コン!‥‥と言う乾いた音が響いた後、上に立つ人物も同じような武器を出し、同じ音をたてた。

 窓の奥の空が陰ると、姿がゆっくりと見えてくる。

 それは黒髪を両サイドで結んだ、水色の着物の少女だった。リシャンと同じ巨大な鎌を手に持ち、表情の無い顔と瞳でリシャンを見つめている。


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