145 真実の扉を開く者
塔の真下に着いたリシャンは、そこから真っ直ぐに見上げた。下からの俯瞰では先端は見えず、雲の中に突き刺さっているかのようだ。塔は雲の高さまではないはずだったが、その先端が見えないのは何かを隠蔽されているからなのだろう。塔を支える四方に伸びた支柱は大きく外側に歪曲しており、水平に近い手前からは、そのまま登れそうに見える、金属が露呈している部分はほとんどなく、蔦がはい回っており、わずかに見える部分も錆の腐食が激しく、元の色が何かは既に分からない。着物を揺らす程の風は吹いてはいるが、通りすぎていく風は不快だった。
「どこから入るの?」
周りを一周してみたが、どこも蔦で覆われて、入口を見つける事が出来ない。
=さあな、俺はここまでは近づけなかった。何しろアレが邪魔してきたからな=
レイブンが後ろを振り向く。そこは死屍累々‥‥意志を持たないアバターの抜け殻が折り重なって倒れている。あちこちにヘリの残骸が燃えていた。
=ここからシャオティンは乗り込んでいったわけだが‥‥=
「あいつが出来たなら、行けるはず」
リシャンは鎌を上に上げ、手前の蔦を引き裂く。蔦は紙よりも簡単に裂け、奥に金属の壁が現れた。
「‥‥フン!」
鎌を一振りしただけで、壁に亀裂が走り、リシャンが蹴とばすとそこには大きな穴が開いた。倒れた衝撃で砂埃が舞う。
=相変わらず下品な奴だな=
「どうでもいい事」
リシャンは暗がりの奥へと進む。まだ塔の底辺部分で、作りは他の廃ビルと変わらない。あちこちに店舗だった場所が見える。
「‥‥‥‥」
埃と植物をかき分けながら進むと、エレベーターだった所まで出る。もちろん動くはずはないが、リシャンは鎌の柄で扉をついて無理矢理こじあけた。
「これは無理そうね」
あわよくば、この竪穴から一気に登ろうと考えていたが、穴全体が塞がっていた。
階段とエスカレーターを歩き、十五階ぐらいまで上がった。その辺までくると地上から伸びている蔦の勢いは弱まり、割れた窓からは光が射し込んできて屋内は明るい。
「全く! 面倒!」
鎌を大きく振ると、衝撃波が床の植物を一掃していく。
=お前は自分が今、ただのAIでしかないという事に、何か思う所はないのか?=
「思ってどうかなる? 私は私。他人から認めてもらう必要なんてないじゃない」
=‥‥そうか=
レイブンはリシャンのその飾り気の無い言葉に深く頷く。




