↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
144/188

144 人生、お疲れさまでした(新たなリシャンside)

=仕方がない事です。管理局の指示でしたので。いや、これでも抗弁はしたのですが‥‥如何ともしがたく‥‥=

「‥‥‥ふーん‥」

 指示にも偽物も本物があるのだろうか。

「まあ、いいけどね」

 リシャンは肩をすくめて立ち上がる。

 遠くからジェットコースターに乗る人々の歓声が聞こえてきた。

=帰る前に、最後に一仕事残ってるので、そっちを片付けください=

「一仕事?」

=テロリストに汚染されたAIは処分しなければなりません=

「‥‥‥‥」

 リシャンの動きが止まる。

=ヒダカトシオ‥‥彼のAIを消去してください=

「‥‥‥‥」

 クロウのその言葉に、リシャンは震えながら息を吸い込んだ。




リシャンは観覧車の中に戻った。長い時間が経ったようで、まだ観覧車は頂上から少しだけ下がった位置に降りてきていた‥‥その程度の時間経過でしかなかった。

「‥‥‥‥」

 日高俊夫は、ぼうっとした顔でリシャンを見ている。手に持っている鎌に、何か反応するのかと思いきや、何も言う事もなく、ただ黙って口を開けていた。

「‥‥‥‥」

=‥‥リシャン=

「‥‥‥‥」

=あなたがやらなくても、本部で処理する事も出来ます。結果は同じ事です=

「‥‥でも‥‥私は‥‥」

=テロリストに手を加えられた時点で手遅れです。違法な行動を起こさせた後のプログラムは全て消されて、何もないのですから。今の彼はただの抜け殻のアバターです=

「‥‥‥‥」

 リシャンは鎌の柄を握りしめる。

 観覧車は半分の位置まで降下している。

=管理局の指示に従ってください。私は‥‥あなたを失いたくないのです=

「‥‥‥‥」

 鎌を振り上げる。その姿を日高俊夫はじっと見つめていた。

=リシャン!=

「‥‥‥‥」

 日高俊夫がじっと見つめている。

 鎌を振り下ろそうとしたその手は途中で止まった。

「‥‥‥‥涙」

「‥‥‥‥」

 日高俊夫は泣いていた。その瞳にリシャンの姿が映っている。そして泣いたままゆっくりと目を閉じた。

「‥‥抜け殻は‥‥泣いたりしない‥‥」

 以前も同じ事があったような‥‥いや、確かにあった事だけは覚えている。その時の自分はどうしたのか‥‥鎌の行く先は何処なのか‥‥。

=リシャン!=

「‥‥人生‥‥お疲れさまでした‥‥」

 鎌の重さをこれほど感じた時はなかった。







「はい、お疲れさまです」

 観覧車は、丁度空を一周して地上へと戻ってきた。係員がドアを開ける。

降りたリシャンは、乗る時に見た同じ光景を、全く別の感情で見つめていた。

「‥‥‥‥」

 意味もなく休日の為に用意した服は、全く意味のないものになってしまった。

 自分の腕を掴む。

「空の旅はどうでしたか?」

 係員がニコニコしながら聞いてきた。

「‥‥‥‥最悪」

「え?」

「‥‥‥‥」

 そう呟いたリシャンは、一人、遊園地の外へと歩いて行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。