142 嘲笑うテロリスト(新たなリシャンside)
『でもその傷の痛みは本当だよ。よく痛みに耐えて動けるよね。凄いね、お姉ちゃんは』
「あなたがAIを操って、こんな事をさせたわけよね。アバターもそうだけど、ほんとに悪趣味ね。リアルに戻ったら自分の顔を鏡で見てみたら? そのギャップで死にたくなるかもよ」
『‥‥‥‥』
テロリストの少女は顔をひくつかせた。
『‥‥私はヴァイアスのメンバーの一人で、クラリッサって言うのよ。エージェントの始末を専門にしているの』
クラリッサはウフフと大袈裟な仕草で笑う。
『あなた達は馬鹿ね。管理局の特権で守られてると思って、慢心してるから、そんなトラップにひっかかるのよ』
「トラップねえ」
リシャンは鎌の柄で自分の肩を叩く。
「確かにはめられたのかもしれないわね。私も‥‥あなたも‥‥」
『?』
「‥‥ふふ‥‥」
クラリッサというテロリストはリシャンも聞いた事がある。用意周到に準備をして、外堀を埋めてから行動して、エージェントを含む管理局の関係者を葬ってきた。決して尻尾を見せる事はなく、その詳細は不明な所が多かった。こうして姿を見せたからには、確実に葬る算段があるからなのだろう。
廃工場にあった罠はあからさまに低級なプログラムだった。リハビリと称してそこに向かわせたのは、管理局がクラリッサの情報を掴んでいたからなのだろう。何の説明もせずに討伐に向かわせたのは、用心深いクラリッサを逆に油断させるのが目的だったのかもしれない。
「全く!‥‥あいかわらずクロウも曲者ね」
リシャンは鎌を回した。無音の白黒の世界の中、ヒュンヒュンという風切り音が響く。
「さあ! とっとと捕まりなさい!」
『‥‥‥‥ふふ‥‥強がってるけど‥‥傷が痛いんじゃないかなあ』
「‥‥そうね。でも、これぐらいの痛み‥‥もう経験済み」
『へえ‥‥やっぱり、お姉ちゃんは面白いね。シャオティンの言ってた通りだ』
「! シャオティン!‥‥彼女は今何処にいるの⁈」
『ふふ‥‥内緒』
クラリッサの笑い顔は、見てると不安になる。
『管理局にいいように使われてるのに、まだ忠実な犬でいるの?』
「そうね、それが私の存在する意味だから」
『可哀そうね。その考えも管理局から植え付けられた偽物だというのにね』
「‥‥‥偽物‥‥‥だとしてもそれが何?‥‥何が本物で、何が偽物なんて‥‥誰が決めたの?‥‥私が思う、私は本物!」
『あなたとは、話にならない!』
クラリッサは杖を出した。赤と青のラインがグルグル巻きになっているステッキは、魔法少女のようだが。
「あなたのその杖だって偽物でしょ。棚に上げて人に言える事かしらね、馬っ鹿じゃないの?」
『‥‥っ!』
クラリッサの表情が険しくなった。
『もう許さんぞ、貴様っ!』
「あは‥‥それが本性! そっちの方がずっと良い!」




