136 価値はどこにある?(新たなリシャンside)
遊園地のゲートから中に進む。すぐに日常にはない、色鮮やかな設備が目に飛び込んでくる。日曜日ではあったが、それほど人はいない。やはり近隣の大型テーマパークのせいで十分な集客が出来ていないようだ。
入口近くに園内の案内図があった。二人はそこで立ち止まって眺める。
「‥‥‥‥」
コーヒーカップ、メリーゴーランド、観覧車‥‥その他にもいろいろとある。それらを知識としては知っているが、実際に乗った事はない。
そもそもリシャンにとってはその乗り物の全てがチープで、それを利用する意味が全くない。コーヒーカップの回転も、メリーゴーランドの高さも、リシャンは簡単にそれを遥かに超える事が出来るからだ。
意味‥‥その言葉が浮かんできた瞬間、リシャンは考えを改める。
意味のある事が全てではないのだ。
「じゃあ、あれにしましょう」
リシャンが指さしたのはコーヒーカップ。それは人間が乗れる大きなカップに乗って、そのカップが回転する事で楽しむというもの。それの何が面白いのかさっぱりだが、体験する事で初めて分かるのかもしれない。
日高俊夫は笑ってうなずく。彼に異論はないようだ。
チケットを見せるとすぐに乗る事が出来た。カップの内側に縁に沿って椅子があり、真ん中にはハンドルが付いている。
「‥‥‥‥」
正面に座り、顔を見つめた。
「は‥‥はは」
それだけで日高俊夫の顔が赤くなるのが分かった。
カップがゆっくりと動き始める。景気が回転して、周囲の家族連れの声や園の音楽が辺りをグルグルと回り出す。
「‥‥‥‥」
リシャンは考えていた。自分が彼に対して行った何かのリアクションをすると、それに対して喜ぶ。それが彼が自分に対して行ったようなお金の提供を何もしなくても。だから彼にはこの自分の反応が、お金よりも大事なものなのだと。それは実際彼が利益を得るサービス的なものでもない。そこにこそ、自由意志による恋愛の意味があるのかもしれない。そしてその意味がなくてもこうして世界に蔓延してる理由なのだろう。
意味がある事だけが価値があるわけではない。
それがまだ何かは分からないが、日高俊夫にそのリアクションを返していくうちに見つかるだろう。




