132 不器用な死神(新たなリシャンside)
「君、聞いてるの?」
腕を掴まれそうになったが、先まわりしてその腕を逆に掴む。
「あ、あ、あ、あ‥‥」
「‥‥‥‥」
背中から逆に腕を持ち上げられ、警官は膝をついた。
「この!」
もう一人の警官が取り押さえようと、腕を伸ばしてきたが、リシャンは姿勢を低くしてそれをかわし、足を蹴ってその警官を転ばせた。ひっくり返った警官は倒れて動かなくなる。
「は‥‥離しなさい!」
力つくで引き離そうと試みるが、岩のようにびくともしない。警官はわけがわからず、肩の痛みに呻いていた。
「別に何かしてたわけじゃないのに、ここの司法機関は乱暴なのね」
「‥‥‥‥何を」
「‥‥全く」
リシャンが手を離すと、警官は腰から小さな棒を抜いて構えた。
「公務執行妨害で拘束する。大人しくしなさい」
「‥‥‥‥」
言いがかりもいい所‥‥そう思ったリシャンは、鎌を出して警官の顔の至近を一閃させる。
「‥‥ひ‥‥」
警官の持っていた棒は、綺麗に先端がなくなった。
=‥‥‥‥そこまで=
クロウがそう言うと、警官二人は透明な箱で覆われた。
=ここでの司法がどういうものか知っているはずなのに、どうしてあなたは、いつもいつも無駄に騒ぎを起こすんですか?=
箱は警官を入れたまま光り始める。恐らくは記憶処理をして、今のをなかった事にしている。
「説明するより手っ取り早いでしょ」
=後の処理が不自然になるのは、プログラムの不具合の元です。もう、目立つような事はやめてください=
「‥‥了解」
クロウの小言にうんざりしたリシャンは話を終わらせる為に、素直にそう言った。
=所で、明日は学校が休みで、例の男子生徒と街に出かける予定でしたたね=
「そうね」
告白?‥‥という事のあったその後、男子生徒‥‥日高俊夫は
『今度の休み、二人で遊びに行きませんか?』
と言ってきた。
リシャンは、具体的に何をどう行動するのか聞いてみたが、日高俊夫の説明は要領を得るものではなかった。
=まさか、その格好で行くつもりですか?=
「街を散策するのに何か問題でも?‥‥その辺でよく見る格好だと思うけど?」
=‥‥あー‥‥うん‥‥=
どこから説明して良いか分からず、クロウはしばらく動きが止まる。
=それは学校生活を送る為に、集団として認識させる為の服です。恐らくは明日着ていくには不向きではないかと=
「‥‥面倒」
リシャンの顔が曇る。
=実社会ではなくなった風習です。リアルでは衣類、その他の必需品は政府から無償で提供されますが、この世界では自分で選択していきます=
「‥‥‥‥」
その行動に意味があるのかと考えたが、そもそも自由恋愛そのものが非合理的なものから生まれたものだ。
「‥‥‥‥仕方ない」
自由恋愛の心理を探るという目的の為、その決まり‥‥のようなものには従うしかない。
「で、どうしたらいいの?」
=それでは、データベースから相応しいと思われる服装を選択します。当日はそれを選択してください=
「了解」
リシャンは不服そうに、今日何度目かのその言葉を呟いた。




