129 恋が歩き出す瞬間(新たなリシャンside)
「ふう‥‥」
俊夫は公園のベンチに腰を下ろして、もう五度目のため息をついていた。
「‥‥全く、格好悪いよな」
勢いで告白してしまった事を猛烈に後悔していた。
明日からどうやって顔を合わせればいいのか分からない。
告って断られた‥‥などという噂が立った日には、クラスで居場所がなくなってしまう。
「それでも‥‥まあ‥‥」
何も言わないままだったら、それはそれで後悔しただろう。
やらない後悔より、やった後悔。これからその経験を糧にしていけばいい‥‥。そう心の中で転嫁させると、落ち込んでいた心がスっと晴れた。
「‥‥帰るか」
勢いよく立ち上がる。カバン振り上げて肩にかけたその時。
“ヒダカトシオ”
「‥‥‥‥?」
後ろから名前を呼ばれて振り向く。
「げ!‥‥遠野さん?」
「げ?」
心の整理がついた矢先に、その心を曇らせた原因が現れ、俊夫は喉から変な声が出てしまった。
「‥‥な‥‥何かな?‥‥遠野さん」
「‥‥‥‥」
遠野楪は睨みながら急接近してきた。
明らかに怒っている顔だ。
「日高俊夫‥‥お前は、私を好きと言った。今でもそれは違いないな?」
「は‥‥はい」
「では、付き合ってほしいという言葉は、愛の告白という意味で間違いないな?」
「あ‥‥愛ぃ?」
それは、あまりにもストレート過ぎる表現だ。
「えっと‥‥そうです、その通りです!」
「そうか‥‥」
遠野楪はそこでニコと笑った。
「だが、まだ私は、お前の事を知らないし、お前も私の事を知らない。これからその辺の所を構築していこうと思うが、どうかな?」
「え‥‥それって‥‥」
すぐには彼女の言っている意味が分からなかった。
「これからよろしくお願いします。‥‥俊夫君」
ユズリハが手を出してきた。
「はい! 喜んで!」
俊夫がその手をぎゅっと掴むと、ユズリハは笑顔を見せた。
「い‥‥」
「い?」
手を掴んだまま、俊夫は下を向く。
「い‥‥やったぁ!」
空に拳を突き上げて大声で喜びの声を上げると、それを見ていたユズリハは首を傾げた。




