126 好きの意味を問われて(新たなリシャンside)
「違うんだ! その‥‥遠野さん‥‥君が‥‥好きなんだ!」
「‥‥‥‥」
遠野さんは立ち止まって振り向いた。それからもの凄い早さで戻ってきた。
「それはあなたが私を好きだって事よね?」
遠野さんも同じ言葉を繰り返している。
「そ、そうだよ」
「‥‥‥‥」
彼女は首を傾げている。
「聞くけど、どの辺が?」
「私の何処が好きだと思うの?」
「‥‥‥‥」
「あなたと私、今まで接点がまるでない。話したのも今が初めて、当然、何を考え、どうしたいのかなどという細部を知る由もない」
「‥‥それは‥‥」
彼女の何を好きだと思ったんだ? 考えろ‥‥そしてそれを言葉にするんだ。
「か‥‥可愛いな‥‥って思って‥‥」
「それは外見の話よね」
「‥‥‥‥」
「その人がその人らしいというのは、何もしなくても最初からもっていたもの‥‥それが好きだと言うなら、今まで人生の中で得てきたものはどうでもいいという事‥‥そんな‥‥そんな‥‥あれ‥‥前にこんな事を‥‥言った事があるような‥‥」
「‥‥‥‥」
遠野さんは、ハッとした顔になる。それから何も言わずに走って行ってしまった。
「‥‥何なんだ‥‥」
俺は一人取り残された。
一体、そうしてしまったんだろう。何か傷つける事を言ってしまったんだろうか。
とにかく一世一代の告白は失敗したようだ。
このままここにいても仕方がないので、屋上から出ようとしたけど、戸を締めた時に、鍵を持っていない事に気が付く。このままだと勝手に入った事になってしまう。
小心者の俺は慌ててその場から逃げた。多分、もう二度と屋上に出る事はないだろう。
外に出れるのは遠野さんだけのようだから。
こうして俺の初恋は撃沈した。




