125 仮想世界の恋人たち(新たなリシャンside)
「俺と付き合ってください!」
俺は手を出した。手が震えている。それはそうだ。
こんな事をするなんて思ってもみなかった。いつも斜に構えて、何だかんだ理由をつけて結局は何もしない。そんな事を繰り返してきた。
でも、彼女を一目見た時、衝撃が走った。そんな日常を打ち破ってくれるような、そんな気がしたからだ。
体裁とかどうでもいい。俺は今、思いの丈をぶつける。
それで駄目なら仕方がない。ここで何も言わなかったら一生後悔して、あの日常を過ごしていく事になるんだ。そんなのはごめんだ。
「‥‥‥‥」
手を伸ばした俺を見てる遠野さんは、顔を曇らせている。
駄目か‥‥やっぱり駄目なのか‥‥。
「付き合うってどこに?」
「え?」
多分、分かってて言ってる。
まさか、そんな典型的な言い方でかわしてくるなんて。
「ゴメン‥‥」
ここは男らしく去ろう。そう思ってたんだけど、後ろを向いた途端、遠野さんに腕を掴まれた。
遠野さんの体温を感じる。温かい‥‥多分、優しい人だ。
「何処に行くの?」
「え?」
「何処かに付き合ってほしいんじゃなかったの?」
「‥‥えっと‥‥」
まさかこの現代に、そんな事を言ってくるとは‥‥まさか試されてるのだろうか?
真面目に説明した瞬間に、そんな事は最初から分かってた‥‥みたいな事を言ってくる‥‥何て事はしないはずだ。
「付き合うというのは‥‥その‥‥遠野さんとお付き合いをしたいという‥‥」
「? 同じ事を言ってるけど?」
「あ、そうだよね‥‥はは」
どう言えばいいんだ? もっとストレートでないと駄目なのか?
色々と考えるけど、それも顔が赤くなるような言葉。口に出すのは至難の業かと。
「付き合う用事がないなら、私はもう帰る」
手を離されて、俺は遠野さんの背中を見つめる。水色の薄手のコートがよく似合っている‥‥などと観察してる暇はない。




