122 時間の歪みが示すもの
知る限り二十の仮想世界がある。その中で初期に試験運用されて終了した01から04までの四つの世界以外に、稼働しているのは十六。それぞれに管理局があり、それを統合政府が管理している。仮想世界ごとにエージェントはいるが、その世界をまたいで移動する事は出来ない。クロウの話では、それぞれに異なる仕様があって、移動は難しいという話だったが、果たしてそれは本当の事なのだろうか。
その答えの一片が、この放置された013の世界に垣間見た気がした。
「‥‥ここは時間の経過が早すぎる」
=そうなのか?=
「‥‥‥‥」
リシャンは無言で頷いた。ずっとこの中にいたレイブンには説明のしようがない。
以前、リシャンも限定されたごく小さな空間の時間を高速で進めた事がある。それは中にいる当人には分からない。
そもそもなぜ013が失敗したなら、また同じ013を作ったのか‥‥普通ならナンバリングとして別にして、別の環境を設定して再構築するはず。また失敗するかもしれない同じ世界にしたのはどういう意味があるのだろうか。
「‥‥まあ、今、考えても答えが出るわけじゃないしね」
リシャンは笑ってまた歩きだした。レイブンも翼を広げて後をついてくる。
かつては幹線道路だった広い道をどこまでも歩いていくと、道にそって抉れて伸びている場所にきた。恐らくそこにはかつて川が流れていたのだろう。今は底にも植物が生い茂っている。
「‥‥‥‥」
リシャンは目を細めた。
黙ったまま鎌を出す。刃は青から赤へとゆっくりと変化していった。
=そろそろ危険なエリアだ。ここから他のサーバーに移動しようとする不届きものを処理しようと待ち構えてる奴らが出てくる=
「私は一応、エージェントなんだけどね」
=所変われば‥‥って奴だ=
「‥‥‥‥」
リシャンは鎌を何度か回転させてから、両手で構える。
素早く動く、何かが複数‥‥いつの間にか囲まれている。
藪をかき分けて、その何かが姿を見せた。
“GIGI‥‥”
「‥‥‥‥」
それは人間だった。生気を失った顔で、頭を揺らしながらゆっくりと近づいてくる。二、三十人ほどのその集団は、手にナイフや銃など、それぞれ違った武器を持っていた。




