120 始まりの告白(新たなリシャンside)
廊下を全力で走っていく。退屈な日常がどんどん後ろに流れていく。
「‥‥‥‥今なら」
昇降口あたりを歩いているはず。そう思って階段に向かったが、
「?」
屋上に続くドアが開いている、普段は施錠されてて、上がる事は出来ない。
その時点で俺は悟った。
普通でない事が起こった。その先には彼女がいるかのしれない‥‥いや、絶対いる。
屋上に向けて走っている途中で、それは既に疑問ではなく、確信に変わっていた。
「‥‥‥‥」
開いている扉から俺は屋上に出た。よくある学園物とは違い、現実に屋上に上がる事は普通は出来ない。
そう、彼女は特別な存在なんだ。
「‥‥‥‥」
埃っぽいような、かび臭いような‥‥初めての屋上の臭いが鼻をくすぐる。辺りを見渡すと周囲は当然フェンスで囲まれている。
俺は彼女を探した。屋内にいる時は広いように感じていた校舎は、こうして平面に感じるとそれほどでもない、こんな狭い場所に閉じ込められていたのか‥‥俺はそれを再認識した。
「‥‥あれは」
遠野さんを見つけた。
給水タンクを囲むコンクリに腰をおろして、何かをやっている。背中を向けてるので良く見えない。
当然、俺はゲームのように真後ろからではなく、脇から回り込む。これで彼女の死角になった。
「‥‥‥‥」
薄緑色のタンクの陰から俺は遠野さんを覗く。
「‥‥‥‥ん?」
足元に黒い影‥‥何かと思えば、それはカラスのようだ。
まさか餌でもあげてるのだろうか。
“こんな所にテロリストがいるの?‥‥‥‥そう‥‥まあ、仕方ないけど‥‥‥‥全く‥‥面倒‥‥”
「‥‥‥‥」
彼女はカラスと話をしている。風で良く聞こえない。
俺は少しだけ前に出たけど、
「!」
コン‥‥と、足元のネジのような金属を蹴ってしまい、それが金属のフェンスに当たって音を立てた。
カラスは飛んでどっかに行ってしまった。
「‥‥‥‥」
僕を見つけた遠野さんは、立ち上がって睨んできた。
「何か用?」
「‥‥えっと‥‥その‥‥」
こんな時、何て言うべきか‥‥どうすれば誤魔化せるのか‥‥。
誤魔化す? いや、違う。俺は遠野さんに興味があってここにいるんだ。
だから正直に言おう。
「‥‥遠野‥‥ユズリハさん」
「‥‥‥‥」
そこで大きく深呼吸する。
「ユズリハさん‥‥俺と‥‥」
「‥‥‥‥」
「俺と付き合ってください!」
無我夢中で手を伸ばした。




