117 もう一人のリシャン
どれぐらいの時間が経ったのだろうか‥‥。
一時間‥‥数日‥‥数年‥‥。
測る物差しは何もなく、ただ不意にリシャンの意識が戻ってきた。
「‥‥‥‥」
横になっている感覚がある。体の上に柔らかい布がかけてある。頬に風を感じる。暑くも寒くもない。
ただ心地よい。
「!」
リシャンは飛び起きた。吹き飛ばされた毛布がベッドから落ち、その下にいる何かがもがく。
=いきなりですね。覚醒時はゆっくりと動き始めないと=
毛布の下からカラス‥‥クロウが顔を出す。
「‥‥‥‥」
周りを見渡す。
決して広くはない小さな部屋。勉強机や小さなテーブル、そこそこの大きさのテレビ、今、自分が寝ているベッド‥‥。
ここがどこだか分からない。
「ここは何処なの?」
=仮想世界013の田舎ですね。別に何処でも良かったのですが、寝起きはちゃんとした方が良いと思いまして、良さげな所を見繕いました=
「‥‥‥‥」
リシャンは立ち上がる。風でカーテンが靡く、開け放たれた窓から外を見渡す。
蒼い空、地上には緑や赤、黄色‥‥カラフルな屋根の家が、海の方まで続いている。
カモメが飛んでいる。その声がここまで聞こえてくる。
「‥‥所で、私は誰なの?」
=簡単に説明するなら、あなたはこの仮想世界の法、それに反する者を取り締まる者に他なりません=
クロウは耳元で囁く。
=深く考える必要はありません。ただ管理局の指示に従って動いていれば、そ れでいいのです=
「‥‥‥‥」




