116 溶けゆく意識
(‥‥‥‥‥‥)
リシャンはまどろみの中にいた。
意識がはっきりしない。足元に地面がない。どこにも感触がない。背中をつけて寝ている状態なのかと思えば、確かめる手足、背中‥‥何処にあるのかさえ、分からない。
ただ、自分という意識だけが何もない宙に浮いている。
闇の中でも、光の中でもない。ただ意識だけが漂い、時間すらないようにも感じる。
このまま未来永劫‥‥だが恐怖は感じない。こうして何もない空間に溶けていく事が、当たり前に感じる。
(‥‥‥そうか‥‥私は‥‥‥)
断片的になっている記憶の中、最後の記憶だけが鮮明に蘇ってくる。
シャオティンの策略で、周囲の負荷を超える力を使ってしまい、そのせいで歪みが発生してしまった。013全体を崩壊させる程ではなかったが、あの一帯は酷い状況になっているのだろう。そこにいたAI達は恐らくは消滅したに違いない。
(‥‥‥‥)
それは謝っても謝り切れるものではない。
シャオティンを道連れとして、自分も消えていく事で、彼らの溜飲を下げてもらえればいいが‥‥そんな事を考えている間に意識が曖昧になってきた。
(‥‥‥‥そろそろ‥‥私も‥‥)
消えるという事は、今こうして考える事も出来なくなり、意識が全てなくなるという事。恐ろしいとか、怖いとか‥‥全く思わないといえば嘘になるが、それでも心は満足感に満たされていた。
やりきった‥‥それが全てだった。
ただ漫然と長く生き続けるよりは、例え一瞬でも思いの丈を弾かせて信じる道を突き進む‥‥それが出来た人生だった。
いつだったが見上げた花火‥‥あのように生きる事ができた自分の、何と幸せだった事なのだろうか。
(良い人生の旅‥‥だった‥‥かな‥‥)
考える事をやめ、リシャンの意識は眠りにつく。




