115 存在の証明
「‥‥‥‥フフ」
=?‥‥何か面白い事を言ったか?=
「別に。何か言い方が誰かに似てたなって」
=‥‥そうか=
レイブンは首を傾げる。
=言っておくが、塔の周辺は管理局が強力なアンチウイルスプログラムを配置している。突破は困難だぞ=
「私はウイルス?‥‥でも了解」
=‥‥最後に一つだけ言っておく事がある=
「まだ何かあるの?」
=身体とのリンクが切れた事は管理局でも把握している。すぐに新しいアバターを作って、体とリンクさせるだろうな=
「‥‥‥‥それって」
=既にエージェントとしてのリシャンは元の013に存在していると思われる=
「‥‥‥‥」
=そこのリシャンとは別にな=
「‥‥‥‥」
リシャンは走ろうとしていた足を止めた。
既に私が本来の013に存在しているなら、今の私は何なのだろうか。
しかも、実際に身体と繋がっているのは向こうだ。
=実際に対峙した時‥‥お前はどうする?=
「‥‥‥‥」
=その覚悟が出来ないのなら‥‥ここで刻を過ごす方が賢明だ。なので‥‥出口はあっても、ないのと同じだ=
「‥‥‥‥」
今の自分はAIで、向こうは人間が操作するアバター‥‥テロリストが人間ではない偽物と呼んでいるのはこの自分の方だ。
「‥‥‥偽物‥‥‥私が?」
手のひらを見つめる。
鎌を振るっていた時、猫を撫でていた時、外で弁当を食べていた時‥‥その時の手と何も変わらない。同じ小さな白い手がここにあり、その手は、迷いの中にいる自分の頭とも繋がっている。
それが偽物だと言うなら、今まで向き合ってきた全てが偽物だという事になる。
でも、その記憶は013の自分も持っている。
その場合、淘汰されるとすれば、やはり、今、こうしている自分なのかもしれない。
そう考えたリシャンは、足を踏み出す事が出来なかった。




