112 もう一つの真実
=この013が本来の013だったが、普通に順調に運営されていたんだが、だんだんと連続性バグ‥‥広がり続ける歪みに、どうにもならなくなり、管理局はこの013放置を決定した=
「‥‥そんな話、聞いた事ないけど?」
=それはそうだろう。世界の全てのAIや、そこに接続しているアバター‥‥人間ごと消したんだからな。情報漏洩の防止という点では完璧だ。全ての罪はテロリストになすりつければいい=
「‥‥‥‥でも、そんな事になったら、リアルの人間の家族や関係者は分かるんじゃ‥‥」
=ほう、統合政府がそんなに個々人に対応してくれると思うのか? 何か言ってきたら揉み消されて終わりだ=
「‥‥‥‥」
=だが、この仮想世界計画は終わらないし、この013という二十一世紀前後の時代の世界が政府にはどうしても必要だったらしい。‥‥なので、新たに別の013が作られた。それが、リシャン‥‥お前のいた世界だ=
「‥‥‥‥」
リシャンはドームから外に出た。
ビル街の景色はいつも見てきた。人混みの中からも、誰もたどり着けない空の上からも。
騒がしいだけの人の波も、夜空に変わって輝く、ビルの明かりも、それが永遠に続くものだと思っていた。
そんなわけがなかった。始まりがあれば、いつか終わりも来る。そんな事は分かっていたはずなのに、それが現実として直面すると、心を鷲づかみにされている感じがした。
「‥‥‥‥」
足元のアスファルトがヒビ割れており、隙間から植物が生えてきている。まだ、その辺のプログラムは機能しているようだ。見上げれば、ビルが折れて倒れているのもある。時間の経過というプログラムだけは実行されているようだ。どこからか吹いてくる風は埃っぽく、人々の生活の残滓のような紙切れが宙を舞っていた。
「なぜ管理局はここを残したの?」
そんな都合の悪いものなら消してしまう方がいいと考えるのが普通だ。
=さあ、統合政府の真意なぞ、底辺の監視官ごときでは分からん=
「‥‥そう」
リシャンはいつものように足元の石を蹴った。
「そもそもあなたは何? 何で監視官が残ってるの? シャオティンはここにいたの?」
=それは‥‥その‥‥何だ‥‥=
レイブンはどもる。
=この世界のエージェントとしてシャオティンが当たっていた。そして俺は彼女の監視官だった=
「‥‥シャオティン」
名前を繰り返す。




