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110/188

110 失敗した世界

 =仮想世界013の‥‥失敗した世界なんだよ=

 廃墟に現れた唯一の生き物‥‥謎の鳥は自分を、元管理局の監視官と名乗っていた。そしてここが仮想世界013の失敗した世界だと。リシャンはその言葉を心の中で反芻する。

 あの時、歪みは発生した。だが、世界全体を壊す程の力はなかったはずだ。せいぜい、一区画程。湾岸地域の数キロ範囲。所が実際は少なくとも都市一つ程度は半壊しているようだ。

「‥‥‥‥」

 全壊はしていない。もしそうなれば、この空間そのものが消えてなくなる。まだこうして空間内を移動出来ている事から、完全に崩壊したわけではない事が分かる。

 だが、この元監視官を名乗る鳥が嘘を言っている可能性もある。言う事を完全にうのみにする事は出来ない。聞きたい事は山のようにあるが、少しずつ話を聞きだし、一つずつ検証していくのが安全だ。

「‥‥‥‥」

 リシャンは黙ってドームの端まで歩いていく。鳥がその後をついてきた。

 =何だ、黙ってどこかへ行くつもりか?=

「‥‥別に、落ち着く所を探してただけ」

 だだっ広いマウンド上では声も聞き取りにくい。とりあえず野球?選手の待合室らしき所まで行って硬いベンチに座った。

 =マイペースな奴だな? 見た所、エージェントのようだが、あまりシャオティンとは似ていないな=

「そう言えば、シャオティンを知ってるのね」

 =まあ、俺は、もともとシャオティンの担当だったからな=

「じゃあ、あなたは‥‥」

 =あなた‥‥ではない、俺の事はレイブンと呼んでもらおうか=

「‥‥‥‥」

 会話が面倒に感じたリシャンは、ため息をつきながら頬杖をついた。

 危惧すべき点がまだある。そもそも今のこの空間自体がシャオティンの作り出した幻という可能性もある。あの状態でシャオティンが無事であるとも思えないが、それすらも幻影だったのかもしれない。そう考えていくと、何が正しいのか分からなくなってくる。

 とにかく、現状、情報は何もない。何者かの思惑があるにせよ、ここで停滞しているよりは話を進めた方が良さそうだ。

「ここが013って‥‥あな‥‥レイブンは言ってたよね」

 =うむ=

「私の知ってる013とはかけ離れてるんだけど?」

 =もちろんそう見えるだろう。お前の‥‥ええと、名前は何という?=

「リシャン」

 =おお、リシャンか。そう‥‥リシャンのいた世界とこことは別なのだからな。おお、いい名前だな=

「‥‥‥‥別」

 鳥‥‥レイブンの言い方が面倒臭く感じたリシャンは、言葉を多く発しない。


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