109 鳥の語る場所
何処かに誰かがいるのではないかと、あちこちの店先を覗いてみたが、やはり姿はない。
かなり風化が進んでおり、こんな状態になるまでには相当の年月が経ったに違いない。それならそれで新たな疑問が沸いてくる。
いくら何でもそれだけ時間が経ったはずがない。矛盾している。
いつしかリシャンは、大きなドーム状の建物に来ていた。
ここも来た覚えがある。
何万ものAIやアバターが、ここに集まって歓声をあげていた。
それほど時間が経っているわけではないが、既に懐かしく感じる。
内部の作りは知っている。迷路のような廊下を進み、ドームの中央まで歩いていく。
「‥‥‥‥」
電気は来てはいないが、なぜか内部はぼんやりと明るい。
人工芝と土が敷き詰められており、前に見たときとその辺が違っている。
「‥‥‥‥!」
不意に気配を感じた。
鎌を出して身構え、視線をあちこちに走らせた。
=ほう‥‥小娘にしてはなかなか鋭い=
「‥‥‥‥」
大きな鳥が飛んでくる。話す鳥‥‥クロウと同じだが、その鳥はクロウより遥かに大きく、こげ茶色の大きな羽を羽ばたかせている。カラスではなく、鷲や鷹の類のようだ。
その鳥はリシャンの手前まできて止まった。
=もう誰も来る事はないと思っていたが、こうも早くこっちに送ってくるとは‥‥シャオティンの小娘も意外にやるものだ=
「シャオティン!」
その名前に反応してリシャンはその鳥に鎌の切っ先をつきつける。
=待て待て! そんな事をしても意味はない。動くより前に意味を考えるのだ。シャオティンの嬢ちゃんは、やっと覚えてくれたが、お前さんは何も分かってないと見える。また最初からとは、骨の折れる事だ=
「‥‥‥‥」
とりあえず鎌を下ろした。
「‥‥で、あなたは何なの?」
=俺か? 俺は管理局の監視官‥‥元が付くがな=
「‥‥‥‥」
鳥で表情は分からないが、その言い方がリシャンには鼻についた。
「‥‥で、元監視官の人に聞きたいんだけど、ここは何処なのよ?」
=ここか‥‥ふっふ‥‥そうだな‥‥=
「‥‥‥‥‥‥」
鳥はもったいぶっている。その姿を見ていると、クロウは何とまともだったのかと思い知らされる。
=ここは仮想世界013=
「まさか」
=仮想世界013の‥‥失敗した世界なんだよ=
「‥‥‥‥」
リシャンは黙ってその鳥の言葉の続きを待った。




