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105/188

105 天秤の刻

「シャオ‥‥ティン」

「‥‥‥‥」

 必死で掴んでいるリシャンを、シャオティンは無言で見下ろす。

「‥‥残念ね、あなたとは良い友人になれると思ったけど」

「‥‥‥‥」

 手を離してから、倒れている小銃を杖に、リシャンは立ちあがった。それから両手で銃を持ち上げて、その先端をシャオティンに向ける。

「‥‥そんな武器がエージェントに効かないのはあなたも知ってるでしょ? なぜそんな無意味な事をするの?」

「‥‥ふ‥‥フフ‥‥」

「‥‥‥‥?」

「無意味な事もいいものよ‥‥あなたには‥‥分からないでしょうね‥‥」

 一匹の不愛想な猫の事を思い出して、リシャンは傷の痛みを忘れて笑った。

「‥‥‥‥」

 一発の銃声が艦橋に鳴り響く。弾はシャオティンを避けて窓に命中してガラスは砕け散った。

「‥‥それが?‥‥何?」

「‥‥フフ」

 砕けた枠の中には外の景色は映っていない。真っ暗な空間が広がっていく。

 =リシャン!=

 そこから真っ黒な鳥が現れた。

「久しぶり‥‥じゃない」

 =‥‥‥‥全く‥‥どうして、あなたはいつもそうなんですか‥‥=

 クロウの体の輪郭が光る。

 =リシャンのエージェント権限を復帰。監視者権限に基づき、急事態特Sに属する事項と判断。特S能力をエージェント、リシャンに貸与=

「‥‥‥‥!」

 リシャンの体が七色の眩しい光に覆われる。それはやがて大きな白い輝く球体へと変化した。回転して球体は楕円形になり、その光は弾け飛んだ。

「‥‥‥‥」

 リシャンは目を開いた。

 周囲には散った黄色や水色の光が、花吹雪のように広がっている。

 傷や怪我の重さは何も感じない。ただひたすら軽く。それは一蹴りで世界の端まで飛んでいけそうな気がするほどだ。

 白い襦袢の上に水色の着物を重ね、その上に花柄の赤い着物を着ている。アップした髪には周りと同じ茜色、黄色、水色、桃色‥‥様々な色彩の花飾りが差しており、黒髪を引き立たせている。

「‥‥‥‥ふふ」

 リシャンは笑った。そして手を空へと伸ばし、握って引き抜いた先から死神の鎌を取り出す。

「あなたと私‥‥どちらに天秤が傾くか‥‥勝負はこれから!」

 回転させてから切っ先をシャオティンに向ける。

「フフフ‥‥あは‥‥旧タイプには負けないからね、先輩!」

「‥‥‥‥」

 シャオティンは真顔になり、リシャンに体を向けた。


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