101 命より重いもの
リシャンが到着した時、既に戦闘は開始されていた。
政府軍の揚陸艦は桟橋に接舷し、あの銃を構えた兵士達が次々と降りてきている。
赤い光線が次々と撃たれている。前回、その銃の脅威が身に染みていたアジェト達は、分厚い土嚢を積み上げて、それに対処していたが、それでも突き抜けて撃たれる者もいる。
「ぐあ!‥‥くそ!」
タイミングを見計らって小銃を撃つ。前回の反省から、貫通力の高いAP弾に変えている為、途中で見えない壁に落とされずに命中する弾もあった。だが、威力が削がれる為に、
装甲服を着ている政府軍の兵士には思っているほどの効果は出ていない。
アジェト達は劣勢に追い込まれてつつある。
「‥‥‥‥」
リシャンは近くの塹壕に潜り込んだ。
「姉さん!」
キアンが驚きの声を上げる。
「どうしたんです?‥‥もしかして、また我々の味方になってくれるんですか?」
そう言う彼はあちこちから出血している。
「‥‥‥‥」
ここは仮想世界なはずだが、その姿は残酷な程に現実味がある。
「味方はするけどね‥‥相手を倒しに来たんじゃない」
リシャンはポケットから包帯を出し、キアンの傷口に巻き付けた。
「?は‥‥どういう事です?」
「‥‥‥‥」
どう説明すべきか‥‥どこから言っていいのか分からず、リシャンは諦めて首を振った。
「キアン! あなたは私の何?」
「は! 忠実な舎弟です!」
「じゃあ、今だけでいいので私のお願い聞いて!」
「もちろんです!」
その会話の途中で、隣の塹壕が爆発した。リシャンは顔を背ける。
「‥‥今から私は政府軍の揚陸艦に突入するから、あなたは援護して」
「そ、それは危険では?」
「私を誰だと思ってるの?」
「は! 失礼しました!」
キアンはにやりと笑う。
「リシャンの姉貴が向かえば、あんな奴ら、いちころですからね」
「当たり前でしょ」
リシャンも口元に笑みを浮かべる。
マガジンに銃を装填し直す。腰にも予備の弾倉を入れる。
隙間から覗くと、政府軍はだいぶこちら側に前進してきているようだ。
これは逆にチャンス。あそこを抜ければ手薄なはず。
そう考えたリシャンは、小銃を両手で持って背中を塹壕につける。次の攻撃がおさまった瞬間に一気に駆け抜ける。
「‥‥あとついで言っておくけど、あなたがそれでどうなろうが、どうでもいいのよ」
「は!」
「でも私的には戻ってきた時にお腹が空いてるのが嫌なので、戦闘が終わったら料理の準備をしておくように」
「え?‥‥いや‥‥はい、わ、分かりました」
「Ok!‥‥じゃあ‥‥」
攻撃の手が緩んだその瞬間、リシャンは外に飛び出した。
そのまま走りだそうとしたが、途中で足を止めた。
「‥‥‥‥良い人生の旅を」




