第12話 名物全部入り飲み放題 6/7
理央「すみません、すぐ来たかったんですけど」
ここみ「いえいえ、ていうかちゃんと飲めてます?」
理央「ぜんっぜんです!」
珠美「ここ、山本課長が座ってたんですけど、最初からひと席余裕ありますから、どうぞ」
理央「いいんですか? ありがとうございます」
ここみ「むしろふたりで3人分の料理片付けなきゃいけなくなってて」
珠美「そうそう。途方に暮れてました」
理央「ていうか、それでなくても、ここの料理、量めっちゃ多くないですか?」
ここみ「そうなんですよ。男性の参加率高いので、会社の飲み会ではよく使うんですよ、ここ」
珠美「しかも余ったのは包んでもらえるんです」
理央「えー! すごい!」
ここみ「ここのテーブル、私たちだけが手をつけるようにしときましょう。そしたら汚くないですから!」
珠美「策士ー」
ここみ「早川主任、どうですか? 明日のごはん、楽になりますよ?」
理央「あー、いいですねー。まぁでも、とりあえず今食べません?」
ここみ「そうですね。たくさん余っても、持って帰れる量は知れてますし」
珠美「俺のポケットには大きすぎらぁ」
理央「んふふ、ちょっと! やめてくださいよ!」
ここみ「え? なになに? なんですか?」
珠美「あのね」
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結局、山本課長が戻らないまま2時間が経ち、閉会の案内が始まった。
「すみませーん、皆さん」
山本課長の声に参加者が注意を向けた。
「あと少しでいったんお開きの時間になりますので、各自忘れ物だけないようにご帰宅ください。この後もどこかで続けて飲むかどうかは好きにしてください。いったんはお店出てくださいね。では、来週からまた宜しくお願いしまーす」
全員が「宜しくお願いしまーす」と言ったあと、パラパラと拍手が送られた。
その後も山本課長は矢野部長と何か話した後、電話をかけていた。
「あ、私も部長にあいさつしなきゃ」
早川主任がそう言って席を立った。
彼女は会の間、いろいろなテーブルを回っては先輩社員たちと親交を深めていた。
そして今も、会の最後のあいさつを部長にしている。
『忙しいもんね、役職ある人ってのは』
チハルさんが言った直後、早川主任の後ろ姿を見ていたここみちゃんが私に顔を近づけて、声のトーンを少し落として言う。
「須藤さん。私が山本課長を次の店まで付き合わせますね」
「ん? なに? どういうこと?」
「もーだからぁ! 私が山本課長に『もうちょっと飲みましょうよ』言いますぅ……須藤さんが『まだ行くの?』言いますぅ……私が『須藤さんも行きますよね』言いますぅ……山本課長も来ますぅ……」
「お、お手間かけます……」
「で、頃合いを見計らって、私が抜けますんで、その後、彼女いるかどうか確かめられるんじゃないですかね」
「そ、そうね」
『彼女くらいならいても気にしないのよ、この子』
うっさいわね。
「いなかったら、須藤さんのターンなんで、煮るなり焼くなり好きにしてください!」
『寝るなりヤルなりね』
山本課長が疲れ果てた顔で戻ってきた。
「結局……戻れませんでした」
ここみちゃんが喋るかと半拍待ったが、こちらを見て黙っていたので私が答えた。
「お疲れ様です。こんなときも、大変ですね」
「あぁ、いやいや、飲み会自体は楽しくて好きなんでね、大丈夫ですよ。部長にダメ出しもされませんでしたし」
「山本課長、もうちょっと飲みません?」
ここみちゃんが切り出した。いよいよか。
『いよいよね』
チハルさんの声は、私を追い詰めるようなものではなかった。
私には、エールのように聞こえた。
「あー、めっちゃいいですね」
山本課長が続けた。私とここみちゃんが目を合わせる。続く山本課長の言葉で私たちの顔が固まった。
「早川主任は、どうなんだろ? 行けるのかな」




