第12話 名物全部入り飲み放題 5/7
山本課長に彼女?
「えー、いるのかな?」
「そんな気、しません?」
ごめんここみちゃん。
全然わかんないんだわ。
そもそも彼女いない説は山本課長本人が言った「勝村には彼女いるからね」という発言によるものだった。
「いや、映画見に行ったときに、そのときいなかったのは、須藤さんの読みが正しいとして、ですよ?」
「はい」
思わず敬語で返事をしたあと、自ら続けた。
「あのさ……ここみちゃんが思ってるのは『もう本命がいるから、わざわざ私たちのご機嫌取らなくてもいいと思ってる』ってこと?」
「そんな感じがするんですよね……こっちに対する、態度というか……」
『今までの飲み会ではどうだったのよ?』
「今までかー……」
「え?」
やばい。緊張とアルコールでチハルさんとしゃべっちゃう。
「あぁ! えっと……今までの飲み会でも、山本課長、あんなだったかなー?って思って」
「あー、どうでしたかね?」
「忘年会くらいしか、飲み会ってなかったし」
「そうですよね。そんなに話さなかったですしね」
『なるほどねー。まぁそもそもちゃんとは確かめてなかったわけだし』
そうなのだ。
そもそも、あの時の映画館で山本課長が「勝村には彼女いるから」って言っていたからこそ、私は山本課長はフリーだと思っていた。
さらにぎっくり腰になってしまったお母さん。
あれ?
『あれ?』
チハルさんと思考がシンクロしているのがわかった。
まるで世界の時間が遅くなったかのように、思考が高速で巡る。
『あのとき、確かお母さんがぎっくり腰になったのよね?』
そう。
それで確か、それを助けに、家に行ったのよ。
あれで完全に……
『あれで完全に実家暮らしだと思ったのに、さっき』
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ここみ「山本課長は? ご実家とか」
山本「近いですからねー。わざわざ帰るありがたみなんてなくて」
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山本課長の年齢、つっても私の少し上だったはずだけど、それで実家暮らしなら、彼女とかいなさそうって、無意識に確信を強めてた。
それが、実家が近いのに実家を出ているとなると。
「須藤さん?」
「え?! はい!」
「大丈夫ですか? ごめんなさい、なんか憶測でいろいろ言って」
「あぁ、いいのいいの」
「もうこの際、ここで確かめません?」
…………
『…………』
「ごめん、それはちょっとやめときたいかも」
「なんでですか? だって須藤さん今日のために」
「ちょおい!」
自分でも驚くほど大きな声が出た。隣のテーブルの人たちもこっちを見た。
「あ、ごめんね!」
ここみちゃん、ほんとごめん。
「い、いえ。こっちこそ、ごめんなさい……」
『気持ちわかるわよ。大丈夫』
ありがとう。チハルさん。
そうなの。
今日の下着のこととか、それにかけてた気持ちの行き場がなくなるとか、今は考えたくないの。
うやむやにしたまま、コトを遂行できるなら、それはそれでいいの。
『ここみちゃんにはそんなこと言えないしね』
チハルさん、私が考えてることわかるの?
ほんとありがとう。
ほんとそうなの。
ここみちゃんは本当にいい子で、一生付き合いたいくらい仲良くしたい。
そんなここみちゃんに言えない気持ちがある。
だからそれは、今日終わりにできるなら、終わりにしたい。
一夜限りで終わってもいい。
それなら、その後なら、ここみちゃんと笑い話にできるから。
でもそれもできなかったら、また何も進歩しない自分のまま、ここみちゃんと一緒にいるのは、やっぱりつらい。
「ここみちゃん、ずっと一緒に飲んでね」
「もちろんですよ!」
「お酒なくなったね。おかわりしようぜ」
「はい!」
「須藤さん! 瀬田さん!」
グラスを持った早川主任がそばに来ていたことに気づかなかった。ここみちゃんがすぐに反応した。
「あ! 早川主任!」
私も飲み会のテンションにすぐ戻した。
「主任! というか主役!」
「えへへ、ありがとうございます」
早川主任が笑いながらテーブルの空いている席に座ると、店員が料理を運んできた。
「名物・黒焼きミックスでーす」
「おお! これもまた主役!」
「須藤さん、主任と並べちゃダメですよ」




