第12話 名物全部入り飲み放題 4/7
18時50分
山本「須藤さんは実家に帰ったりします? 年末年始」
珠美「あ、いや、どうしようかな。まだ決めてません」
ここみ「須藤さんほんと前もって決めるの嫌いですよねー」
珠美「そんなことないって!」
山本「おふたり本当に仲いいですよね」
ここみ「そうですねー。須藤さんって、なんかほっとするんで」
山本「あー、なんかわかります」
珠美「いやいや、どういう点ですか?」
山本「んー、なんていうか、いつも楽しむことを大事にしてる気がするんですよね。なんかミスしたときも、もちろん必死にリカバリするんですけど、『やばかったねー』みたいに、結局楽しく終わっちゃうというか」
ここみ「あー! それめっちゃわかります!」
山本「そんなだからこっちも無理にいいかっこしなくていいし、きっといろんな部分も受け入れてくれるんだろうなって、思っちゃいますね」
珠美(うわ、結構嬉しい)
山本「そういうとこ結構好きなんですよねー」
珠美(!!!)
チハル『なにぃ?!』
ここみ「同感ですねー」
珠美「えー、ほんと?」
山本「いやほんと、素敵だと思います」
珠美(!!!)
ここみ(須藤さん! ここは意味なく笑うとこです! 意味なんてなくていいんです!)
ここみ「山本課長は? ご実家とか」
山本「近いですからねー。わざわざ帰るありがたみなんてなくて」
ここみ「そうなりますかね?」
山本「瀬田さんは? 実家どこでした?」
ここみ「福岡ですよ」
チハル『行け!』
珠美「あ、私新潟でーす」
ここみ(須藤さんちょっと崩しすぎです! 1時間早いです! 念話とか使えたらいいのに)
ここみ「米どころ、酒どころですねー」
山本「あーやっぱり。どっちも美女で有名な町ですもんねー」
チハル『おぉ!』
珠美「あははははは」
ここみ(ん〜……まぁいいでしょう!)
山本「美人で楽しくてお酒飲めるって、男なら付き合ったら心配で夜眠れなくなっちゃいそうですね」
ここみ(ん~? これはちょっとどうなんだろう)
珠美「いやいや、ないですないです」
矢野「山本くーん! ちょっとこっち来てー」
山本「あ、はーい!」
ここみ(うーん……)
山本「じゃあ、ちょっとすみません」
ここみ「はーい。大変ですね」
山本課長はこちらに向けて笑みを向けて、すぐに席を立った。
**********
あー、行っちゃった。
呼びつけた矢野部長のいる席には勝村課長と早川主任がいた。もしかしたら課長職のふたりの、新人時代の成功談や失敗談を早川主任に聞かせることで、馴染んでもらおうとしているのかもしれない。
まぁ、しばらくはゆっくり飲もう。山本課長、良い感じの話題で盛り上げてくれたけど、前半に畳みかけすぎなのよね。ここみちゃんは、あしらうのに慣れてそうだけど。
そのここみちゃんは、山本課長の後ろ姿から目を離さない。
「どうかした?」
「あ、いえ……」
「はー、とりあえずゆっくり飲もう」
「そうですね。それもいいんですけど、その前にちょっといいですか?」
「な、なに?」
その前振りほんとやめてほしい。緊張感しかない。
「山本課長、ほんとに彼女いないんですかね?」
「え、わかんない。なんで?」
「いや…………なんか、こんないい女ふたりと話すのに、なんかすごく、慣れてるっていうか……ある意味投げやりというか……」
「えー?! そう?」
「そんな気がするんですよね」
『聞いときなさい。絶対ためになるから』
いつの間にか私の肩に乗っていたチハルさんが言う。
ま、まぁ、そう言うなら。
「えっと、ごめんね? どのへんが?」
取り皿に乗ったミニトマトを口に入れたここみちゃんに聞く。
「……あのですね、さっきから山本課長、普段ならセクハラにもなりかねないこと言ってません? 好きだの、美人だの、付き合ったらどうだの」
「まぁ……たしかに」
『夜の営みの話もさっさとしろってのよ』
まだ6時台よ。
「そう思いますよね?」
「いやまぁでも、そこはそれ、飲み会だし」
「そこですよ」
『なにが?』
チハルさんが勉強熱心に聞く。
「なにが?」
「飲み会だから、どうなんですか? なんの影響もないですか?」
『んー……』
「んー……」
「確かに飲み会ですから、人事に通報までは大げさかもしれないですよ? 飲み会ですから。でも、そういう話題を振られるのが嫌な人からしたら、確実に敬遠したくなりません? 飲み会とは言え、です」
『ほほぉー』
チハルさんが楽しそうに感心している。
「えっと…………てことは、どういうこと?」
ごめんね、ここみちゃん。ほんとにわからんのだわ。
「すみません回りくどくて。私が思ってるのは、もう彼女いるんじゃないの? ってことです」
「え」




