第12話 名物全部入り飲み放題 3/7
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午後6時半。
佐山優斗優斗は気になっていた。
早川理央からの返信がないのだ。
『今日先輩と飲むことになったから、ちょい遅れると思う。長く飲む人じゃないから、多分8時か9時には終わると思うけど』
午後4時に送ったメッセージ。
これに返信がないのだ。
業務中にスマホを見ることができないとしても、定時を越えてなお返信がない。
スマホの電池切れか、スマホをどこかに忘れたか。
いずれにしても、もし帰宅して理央が部屋の前で待っているということになれば、文句を言われるのは目に見えている。
まぁ、こっちはちゃんと連絡してるんだから、責められる筋合いはないか。
とは言え性格を考えれば、きっと責めてくる。
かすかな憂鬱を押し込めたとき、先輩社員が声をかけてきた。
「佐山、出れる?」
「はい! 行きますか!」
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午後6時半。
チェーン店ではない和風居酒屋。
「それでは、早川主任を全力で歓迎しましょう! 100対ゼロ! 乾杯!」
「カンパーイ!」
矢野部長のよく分からない乾杯の音頭をきっかけに、歓迎会が始まった。
自社の営業部が4人がけのテーブル席を6つ、横に並べて使っている。
それぞれのテーブルでグラスをぶつけ合った直後、早川主任は各テーブルをあいさつに回っている。
「早川主任は、しばらくはこっちに来ないかもですねー」
「そうね」
「縁起悪い掛け声だな」
同じテーブルの山本課長がつぶやいた。
「え? なんですかそれ?」
ここみちゃんが尋ねる。
「カンパイ。ヒャクゼロで負けるって意味ですよ」
『え、つまんな!』
「え、つまんな!」
誰にもわからないがチハルさんとシンクロしてしまった。
山本課長が笑いながら突っ込んでくれた。
「須藤さんそれ言い過ぎです!」
「えーでも私は須藤さんに完全に同意です」
とりあえず楽しいからいいや。
『気ぃ抜くんじゃないわよ。山本課長行くならもうそれでいいから、しっかりアプローチしなさい』
だからもうそのつもりなんだってば。
佐山優斗の顔はそれまで忘れることができていた。
それなのに、思い出してしまえば、ふたりで話しているときのあの笑顔が鮮明に脳裏にこびりつく。
『とりあえず席は当たりなんだから、楽しく飲もう』
そうね。
チハルさんも、てきとうにつまんでてね。
お酒は分けられなくてごめんだけど。
各テーブルにサラダと刺身盛りがすぐに運ばれてきた。
『え、ちょっとなにこれ!』
チハルさんが驚くのも無理はない。
そしてここみちゃんも歓喜の声を上げる。
「やったー! 来ましたねー! 名物・刺盛りとポテサラ!」
刺身盛りは小ぶりではあるものの舟盛りが各テーブルにひとつずつ。
ポテトサラダは色の濃い黄身の卵を使い、ブロックベーコンと黒胡椒、フライドオニオン、さらにマスタードマヨが格子状にかけられている。




