第2話 粗大ごみシール 1/8
須藤珠美。
身長168センチ。
体重53キロ。
Cカップ。
29歳処女。
好きなものは晩酌とオナニー。
最近の悩みは目の前の妖精をどうしたらいいかわからないこと。
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胃液の匂いがツンとする妖精が、こちらを見ながら言う。
「あと1年経ってあんたが処女のままだったら、あんたは私みたいな妖精になることが確定するのよ。聞いたことない? 30過ぎて処女だったら妖精になっちゃうって」
「き、聞いたこと……あったかな? あったような気はする……いや違うわよ。30歳すぎて童貞だったら魔法使いになるんじゃないの?」
「女の子は妖精なのよ」
「そ、そうなの?」
「ま、妖精云々はゆっくり受け入れるとしてさ、あと1年、っていうか、あと364日しかないってことよ」
妖精の言葉をなんとか受け入れながら時計を見た。11時50分を指している。29歳になった最初の日が、間もなく終わる。
え、ちょっと待って、あと1年? あと1年で良い感じの男の人と出会って彼氏になってもらってやっちゃわないといけないの?
「ま、それはそうとしてさ」
私の混乱をよそに妖精は冷静な声で言う。
「ねえあんた、ちょっと体洗わせてくれない?」
妖精が吐瀉物の中に立ちすくみ、私を見上げながら言った。
「あ! そ、そうね、ちょっと待ってて! 洗面器取って来るから! 待っててよ! 勝手にウロウロしないでよ!」
「……意外に動じてないのかしら」
妖精の不満げな声を背中で受けて、浴室に走った。
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とりあえず、妖精には洗面器の中に入ってもらうことにした。
浴室から持ってきた丸い洗面器に妖精を入れる。
「あんたねー、もうちょっとよく噛みなさい。イワシだかなんだかの骨がそのまんま出てきてるじゃない。ほら、これ」
妖精が髪にからまったオイルサーディンの骨をこちらに見せてくる。
「うるいさいわね! とりあえず自分で拭いてよ!」
乱暴に応え、妖精に2,3枚のティッシュペーパーを押し付けた。すぐに、今度は5,6枚まとめて取り出し、床を拭きはじめる。
自分のゲロはさっさと片づけたい。
「よし」
床の吐瀉物を拭き終わった。
「なにが『よし』なのよ! まだ私がくっさいでしょうが!」
「わ、わかってるわよ! 次はシャワーなんでしょ! その次はドライヤー! 服も洗うし、乾かすわよ! 乾くまではハンカチにでもくるまっといてもらうわね! これでいいでしょ!?」
ひと息にまくしたててから、ため息をついた。
「オッケー!」
全然オッケーじゃないわよ……やること多いな……
妖精が入ったままの洗面器を持ち、浴室へ移動する。
戸惑っていはいるものの、妖精の呑気な声に苛立つほどには、平常心を取り戻していた。
妖精が入った洗面器を浴室に置き、少し考えて、服を脱いだ。
「ん? あんたもシャワーすんの?」
「そうよ。いっぺんに終わるから」
「そりゃそうね。いやー、出会って数分で裸の付き合いになるとは、思ってもみなかったわ」
「私は妖精と出会うことを思ってもみなかったわよ」
「私も吐かれるとは思ってなかったわよ」
「……とりあえず、お湯作るから、待っててね」




