第1話 子持ちシシャモ 6/6
一口ごとに別の料理に手をつけながら、テレビを見ながら、30分ほどで食べ終わった。
満腹になった。
酒はおおむね、焼酎ハイボールと決まっている。
この商品名はなんかずるいわよねー。
焼酎ハイボールを略して酎ハイなんだから、これを商品名にするのはいかがなものか、と常々思っていた。
しかし味が好きだから買わないわけにはいかない。
特別小食というわけではないが、炭酸入りの酒を飲むとかなりの満足感がある。
「子持ちシシャモ、意外とアリね。はー、おいしかったー」
満足感に浸っていると、ムラムラしてきた。
人間は欲求をひとつひとつ順に解消していく生き物らしい。
食欲が満たされた今、性欲が大きくなってくるのを感じる。
ソファに横になり、仰向けでスマートフォンを操作する。
「さーて! 盛り上がってまいりました!」
大きすぎる独り言。
ホーム画面には死んでもショートカットを置けないお気に入りのサイトは、ブラウザでブックマークしている。
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「ふぅ」
ティッシュを取り、手と局部を拭く。
「はー、スッキリした」
ソファから上体を起こし、座る姿勢になった。
テーブルの上には、食後そのままの箸と皿と空き缶。そして包装紙のまま箱に入ったワイン。
野沢の顔を思い浮かべる。
続いて時計を見る。19時30分。
明日は土曜日。
「せっかくだから、飲んどくか」
テレビのリモコンを操作し、映像配信サービスに入力を切り替えた。
「良いワインだって言うなら、映画と、チーズと」
言いながら冷蔵庫を開ける。
「生ハムなんて気の利いたものはないのよねー」
冷蔵庫のドアを閉め、シンクの下の収納を開けた。
「あ、オイルサーディンあるじゃん」
そこからの記憶は断片的だ。
何度か見たお気に入りの映画のお気に入りのシーン。
冷蔵庫を何度か往復したが、チーズは大した量がなかった。
そして思いのほか美味しかった「オイルサーディンのバジルパン粉焼き」も、やはり大した量ではなく、「ワインならアテなんかなくても美味しく飲めるのよ」とひとり言いはじめて、結局1本丸々飲み干した。
そして、いつの間にか寝ていた。
あ、やばい。もう頭痛い。
つか気持ち悪い。
目が覚めて、近くにあったいつかのレジ袋を乱暴につかもうとしたが間に合わず、結局床に胃の中のものを吐き出した。
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つまりそのとき、妖精ごとゲロっていた、ということになる。
「ちょっと! どういう出し方なのよ! ぐぁっ! くっさ!」
出したばかりのゲロの中から、妖精が抗議している。
可愛らしい服を着た、可愛らしいサイズの、少女とは言えなさそうな、そこそこの年齢の妖精。
なんなのこれ……
なぜ私のゲロから妖精が? いや、私から妖精が出たの?
「ったくもー……あんたさー! 今日がどういう日かわかってんの?」
「え? えっと、今日? た、誕生日……」
「そうよ! 29歳の誕生日でしょ!」
「う、うん」
「聞いたことない? 30過ぎて処女だったら妖精になっちゃうって。あんたは残り時間あと1年しかないから、今日から私が憑くことになったのよ」
第1話 おわり




