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第12話 名物全部入り飲み放題 1/7


 29歳OLの須藤珠美(たまみ)は「30歳になるまで処女のままだと妖精になる」という運命の元、妖精チハルとともに、1年間を過ごすことになった。

 1年間限定で高まる出会い運は上司、同級生といったいろいろな男との急接近を巻き起こす。

 そしてついに山本課長と急接近のチャンスになる大本命の飲み会当日となった。

 果たして珠美は山本課長を相手に処女喪失をすることができるのか。

 **********



「おはよ。よく眠れた?」

「……ううん」


 布団に入ったまま、枕元に座るチハルさんに返事をした。

 壁掛け時計を見る。

 6時半。

 余裕があるようなないような時間だ。

 しかたなくベッドの上で上体だけ起こすと、チハルさんがまた話しかけてきた。


「あんたさ」

「……なに?」

「佐山とかいう子、好きだったの?」


 昨日佐山くんは、家で食べるご飯を買いながらも女と待ち合わせをしていた。

 親しげなやり取り。


 あ、ダメなのか……と思った。

 向こうからも良いムーブがあり、それもあってか、元々持っていたものを手放した気さえする。


 処女喪失喪失とでも言うのかしらね。

 相手としては、なんだかすごく望ましいような気がしてたのは事実だけど……


「…………わかんない」

「ふーん」


 チハルさんの答えはそっけなかったが、放置するような雰囲気は不思議と感じない。


「心配してくれてありがとね。でも強がってるわけじゃなくて、ほんとにわかんないのよ」


 言いながら、ベッドから降りた。

 やる気は出ないが、時間は過ぎていく。

 朝の準備は進めないといけない。


「好きとかどうとか、そんなのここしばらく考えたことなかったし。チハルさんと会ってからは周りの男のことは、好きかどうかよりも、初体験の相手としていいかどうかでしか見てなかったから…………だから、わかんない」


 言いながら洗面所へ向かった。

 背後から、ベッドの上に残ったままのチハルさんの声が聞こえた気がした。


「じゃあ好きってことじゃん」


 ごめん。

 わかんないし、追い打ちかけないでよ。


 12月4日 金曜日

 早川主任の歓迎会当日



 **********



「おはよう……ございます。大丈夫ですか?」

「え、うん。大丈夫だよ? なんで?」


 更衣室で会うなり、ここみちゃんが尋ねてきた。


「いや、いつもより疲れてそうなんで……」

「あー、緊張してんのかも。あんまり眠れなかったからさ」


 ロッカーを開けて鞄を入れながら答えると、ここみちゃんが驚いた。


「ほ、ほんとですか?!」

「う、うん。なんで?」

「いや、それってもう本腰入ってるってことじゃないですか」


 ここみちゃんは当然、私と山本課長とのことを言っている。

 今日の早川主任の歓迎会。


「んー、まぁねー」


 一次会のあと、二次会三次会と続くのかはわからないが、ともかくふたりになって、そのままホテルでもどこでも。

 私も、その方向で行けたらいいなと思っている。


「え! しかも今日めっちゃかわいいのつけてません?!」


 ここみちゃんの視線は私のブラに向けられている。


「あ、これ? えへへ。気合入ってるでしょ?」


 ラベンダーカラーを基調に、白とグレーの刺繍が上品な濃淡を演出している。

 きちんと大人っぽく見えて、それでいてガツガツしてそうじゃない。

 山本課長とねんごろになれなくても、むなしくならないようなデザイン。


「これはもう、やるっきゃないですね」

「ま、なるようになるでしょ。頑張るわ」

「仕事も頑張ってくださいね。昨日の須藤さん基本的にダメダメだったんで」

「ごめんって」

「冗談ですよー」


 ここみちゃんが輝く笑顔を向けてくる。


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