第10話 ミートボールパスタ 3/6
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昼休みが終わってすぐ、山本課長が早口で声をかけてきた。
「須藤さん悪いんだけど30分後の会議の資料お願いできますか?」
余裕のなさそうな早口だ。
ほんのわずかだが、呼吸が荒くなっている。
「え、ええ、もちろん」
『やっと来たわね。もうちょっとゆっくりしてってよ』
無茶言わないでよ。
どう見ても忙しそうでしょうが。
「この資料10部コピーしてください」
「はい。ホチ止めは?」
「できるならしてください」
「あ、私もやります」
早川主任が加わった。
「早川さんにも会議に入ってもらいます。その打ち合わせを今からさせてください」
「あ、はい」
『あっち行きなさいよね! あ! 違う! 哲雄とふたりっきりにならないでよ!』
無茶言わないでよ。
「C会議室なので須藤さん、余裕あったら運んどいてください」
山本課長は私にそう言ったきり、早川主任も置いて行ってしまった。
やり取りに物足りなさを感じたけれど、忙しそうな山本課長も良い感じではあった。
スーツの下の薄くない胸板が上下していた。
急な会議で、各所を奔走しているのだろう。
あんな息切らされて抱かれたら……どうなっちゃうんだろう……
その瞬間、体中に桃色の電流が走った。
ぐぁぅ。
こんな脈絡もなく来るとは。
生理的欲求は生命維持に関わるものほど優先されると聞いた。
昼食を食べて食欲が満たされたばかりの今、性欲にシフトしやすくなっているのだろうか。
『あんたまたキたでしょ?』
なんでわかんのよ。
早めに資料作って会議室持ってけば、ひとりでする時間あるかも?
そんな私の考えは知らず、早川主任が言う。
「ごめんなさい、手伝えなくて」
「何言ってるんですか。縁の下の力持ちですから!」
『手伝わない方がいいわよ。会議室でしちゃうかもしれないから』
なんでわかんのよ。
早川主任は申し訳なさそうに笑いながら、山本課長の行った方に歩いていった。
山本課長、昼休み明けですぐ頼んでくるってことは、お昼ごはんも食べてないのよね。
『多分哲雄、昼ごはんまだよ』
1ヶ月近く一緒にいるせいか、考えることが一致してきた。
だから欲情したときも、どう対処しそうなのかもわかるのか。
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午後2時半。
山本課長、勝村課長、矢野部長が揃ってフロアに戻ってきた。
「じゃあ山本くんは一時的に渡せるものは勝村くんに渡しちゃって」
早口に指示する矢野部長の顔に笑顔はない。
「承知しました。じゃあ勝村課長、15分後に」
「はい」
こちらもいつもの仲良しモードではない。
好ましくない状況が発生したことは、コピーを取っただけの私にもわかる。
席に戻った山本課長に、声をかけた。
「山本課長、何かできることあったら、いつでもお願いします」
「あ、そうですね。じゃあごめんなさい、早川さんが残って会議室の片付けをしてくれてるので、手伝ってもらっていいですか? 彼女にまた別のことを頼まなくてはならないので」
「わかりました」
言っちゃ悪いけど、こういうときって事務職は気楽よね。
『なんか大変そうだけど、金曜の歓迎会に課長クラスが来れなくなったら意味ないわよね』
ほんとじゃん。
『そして早川主任は来るのよ? 主役だし、まだ残業するほどは関わらないだろうし』
うんまぁそれならそれで。
フロアにふたりっきりで残業とかにならないならいいわ。




